チャペック『チャペックの犬と猫のお話』

チャペック『チャペックの犬と猫のお話』

 

“ロボット”の名付け親による犬と猫のエッセイ。

チャペック(1890-1938)はチェコの作家。
伝記文学、純文学、SF,児童文学など活躍の幅は広いが、なんといっても ”ロボット” という言葉を作ったことで有名だ。
1938年にノーベル文学賞候補となったが、その直後に惜しくも他界した。

さて、この本は、そんなチャペックのウイットとユーモアにあふれたエッセイ集である。

解説含めて全205ページの文庫本だが、猫が出てくるのは、最後の40ページだけ。
最初の150ページはずっと犬の話である。
中でも子犬『ダーシェンカ』の話は日本でも有名だ。
楽しい文体と確かな観察眼で、非常に面白い。
ただひとつの点を除いては・・・

当時のチェコでは、(チェコのみならず、世界中どこでも)、産まれた子犬を間引きするのは当然の習慣だった。
8匹の子犬が生まれたのを見たチャペックは、とても気楽に、間引きしてくれる人を探す。
そして6匹を間引きしてしまう。
不妊手術が行われなかった昔では、ごく普通の事だったかもしれないが、今の時代にこの部分を読むとドキッとする。

猫話はもっぱらプドレンカという多産な猫の話である。

とにかく次々と子猫が産まれる。
不思議なことに、猫に対しては、間引きという行為は行われていない。
(書いていないだけかも知れないが。)
チャペックは友人知人に子猫を押しつけてまわり、それでも貰い手が足りなくなり、新しい知人の輪を獲得するために無神論団体か宗教団体に新規加入を考えたりする。
不妊手術ができなかった時代の喜悲劇だ。

猫に対しては、犬に対するほど思い入れはないようだが、それでも、優しく、楽しく、おおらかに、猫を見つめている。古き良き時代という感じがする。

巻頭に16ページにわたって犬と猫の写真が掲載されているが、すべてチャペック自身が撮ったものだそうだ。
動物が好きな人の目で撮られた写真であることは一目瞭然。

また、本文中の挿絵は、チャペックと彼の兄ヨゼフの筆による。
単純な線でよく特徴が捉えられていて、ひょうきんで、かわいい。

(2003.04.15)

チャペック『チャペックの犬と猫のお話』

チャペック『チャペックの犬と猫のお話』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『チャペックの犬と猫のお話』

  • 著:カレル・チャペック
  • 訳:石川達夫(いしかわ たつお)
  • 出版社:河出文庫
  • 発行:1998年
  • NDC:989(文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:4309461883 9784309461885
  • 205ページ
  • 登場ニャン物:プドレンカ
  • 登場動物:犬

 

目次(抜粋)

ミンダ、あるいは犬の飼育について
イリス
ベンとビヨウとブラッキーとビビ
ダーシェンカ、あるいは子犬の生活
子犬の写真をうまく撮るには
ダーシェンカをおとなしく座らせておくためのお話
犬の品評会
犬についてもう少し、それから猫について

訳者あとがき
文庫版 訳者あとがき
解説 なだ いなだ


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チャペック『チャペックの犬と猫のお話』

5.8

猫度

4.5/10

面白さ

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

6.0/10

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