半藤末利子『夏目家の福猫』

半藤末利子『夏目家の福猫』

 

『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』から抜粋・収録。

この本のなりたちについては、『あとがき』で説明されている。

私は過去に『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』という二冊の単行本を出している。
(中略)
今回新潮社さんのご厚意で、その二冊の本の中から主に漱石に関するものを取り出して一冊に纏めて出版されることになった。

ただ、予めお断りしておかねばならないことがある。本書のタイトルを変えたということである。そのために、新内容の本と思われて購入される方もあるやもしれない。そのことのないようにと祈るばかりである。
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はい、新内容の本と思って買っちゃいました。

常々思っているが、既刊本のタイトルを変えての発行なんてものは、決して出版社の「厚意」ではない、いや、著者にとってはそうかもしれないけれど、読者にとってはただの「出版社の金儲け、手抜き、ごまかし」にすぎないとしか思えない。
今は、昔のように、本屋の店頭に立って、一冊一冊手にとっては、中身を調べ、少々立ち読みもして、ようやく「買おう」となる時代ではないのだ。
インターネットの表紙画像と表書きだけで、判断して買うのである。
知らずに同じ本を買ってしまうのは当然である。

でも、ま、漱石ファンの私だから、「所蔵の漱石関連本が1冊増えた」というだけでけっこう嬉しい単純さもある。
中を開いて、一度読んだ内容だとすぐにわかったけど、にもかかわらず、面白ろ楽しく最後まで読んだ。
何回読んでも良いものは良い。

それに、タイトルだけを変更した本と違い、この本は2冊からより抜いて合体させた本だから、なんだか許せる気もする。

それにしてもどうしてこんなに、漱石という人物は、人を魅惑するのだろう。
時代を超え思想も性別も越えて、漱石は人々を魅了して止まない。
私も小学校高学年で初めて『猫』を読んで以来、魅せられっぱなしである。

そして、漱石の妻、鏡子婦人についても、私は次第に魅せられつつある。

あの偉大なる漱石は、この妻がいたからこそだったのだという気がしてならない。
なんて気持ちのよい女性だろう。
まっすぐで、そして、強い人なんだろう。
神経を患っていた漱石が、あれほどの大小説家として立てたのは、誰が何と言おうと、やっぱり鏡子婦人の支えがあってこそだと私は信じている。

そして、漱石と鏡子の娘、筆子(著者の母)の、夫・松岡譲に対する、あまりに深い愛。
その愛情の深さは、鏡子の遺伝だろうか。

筆子は死ぬまで夫に惚れぬいていた。
そして、そんな祖母(鏡子)や母(筆子)を語る、著者の視線や筆運びも、まこと爽やかなのである。

漱石という男は、世間の評価は知らず、私の目には、妻にも娘にも孫にも恵まれた、女運の強い人だったんじゃないかと思えてくるのだ。

(2010.10.27)

半藤末利子『夏目家の福猫』

半藤末利子『夏目家の福猫』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『夏目家の福猫』
『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』から抜粋・収録

  • 著:半藤末利子(はんどう まりこ)
  • 出版社:新潮社 新潮文庫
  • 発行:2008年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:9784101352510
  • 211ページ
  • 登場ニャン物:太郎(タロ)ちゃま
  • 登場動物:

 

著者について

半藤末利子(はんどう まりこ)

エッセイスト。漱石門下生の坂松岡譲と漱石の長女筆子の四女として生まれる。上智大学卒業。1944年、父の故郷である新潟県長岡市に疎開。高校卒業まで暮らした長岡は、第二の故郷となる。六十の手習いで文章を書き始める。著書に、本著の元となった『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』がある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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半藤末利子『夏目家の福猫』

3.6

猫度

0.5/10

面白さ

6.5/10

漱石ファンへのお勧め度

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

0.5/10

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