原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

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原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

猫が人間の才能開花をたすけたのにゃ!

日本および世界の偉人達と、彼らが愛した猫たちとの関係。

まずは南方熊楠(1867-1941)。破天荒で、めちゃくちゃで、おそるべき大天才。彼の逸話を読む度に、こんな男が日本にもいたんだなあ、と改めて感心させられる。粘菌の研究等で世界史に残る学者で日本国内より諸外国での知名度の方が高い。彼の業績は野口英世よりよほどすごい。
この熊楠が大の猫好きだった。極貧のロンドン生活中でも猫だけはそばにいた。熊楠のような男に規律社会で生きる犬は似合わない。やはり自由な猫だろう。なんだか嬉しい。

原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

私も尊敬して止まない偉人・南方熊楠がまっさきに取り上げられているのが嬉しい。

稲垣足穂(1900-1977)。妖筆の大前衛作家。
足穂の猫の名がおもしろい。白い2匹の子猫に、カカとピピと名付けたそうだ。本には書いていないけど、カカ・ピピって、フランス語の幼児語で「ウンコとオシッコ」。カカだけ、ピピだけならフランス語とは無関係だろうけれど、カカ・ピピ(caca,pipi)が組み合わさっているなら意図的に名付けられたに違いないと想像され・・・にゃははです。

岡倉天心(1862-1933)。明治時代を生きながら、日本人としての誇りと尊厳を保ち続けた偉人だ。英語が巧みで、当時の日本人としては誰よりも西洋文明を知っていながら、日本文明が西洋文明に決して劣らないどころか秀でている面も多いことを西洋に紹介し続けた。
その天心がガードナー婦人に送った手紙には、猫の孤雲(コーチャン)への愛情があふれている。

アブラハム・リンカーン(1809-1865)。言わずと知れた、奴隷解放で有名な第16代アメリカ合衆国大統領である。
そのリンカーンが、あるとき、ある軍の通信部を訪ねたとき、たまたま子猫たちがいた。リンカーンは子猫を膝にのせてこう言ったという。
「猫くん、君たちは猫でよかったねえ。神様に感謝しなくちゃ駄目だよ。今起こっている恐ろしい戦争のことなんか、君たちは何も分からないんだろうなあ」
そして、大佐に猫たちを可愛がってくれるように頼んだという。

そのほか、茂田井武、熊谷守一、春日部たすく、津高和一、シュヴァイツァー博士の逸話が載っている。いずれも心温まる猫たちとの交流の記録である。

やはり天才と猫はとても似合うのだにゃ~!

なお、この本は月刊『ねこ新聞』に掲載された原稿に大幅な加筆を加えてまとめられたものである。

月刊『ねこ新聞』

(2007.12.18)

原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』和田誠装画。この絵がまたすばらしいんです。

原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

原口緑郎『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』裏表紙

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『吾輩のご主人 天才は猫につくられる』

  • 著:原口緑郎(猫生) (はらぐち りょくろう)
  • 出版社:河出書房新社
  • 発行:2007年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:9784309018218
  • 213ページ
  • モノクロ挿絵
  • 登場ニャン物:チョボ六、カカ、ピピ、孤雲(コーチャン)、ハイ子、他。
  • 登場動物:-

目次(抜粋)

  • はじめに
  • 天馬空をゆくエコロジーの巨人――南方熊楠
  • 猫と聖書と広辞苑――稲垣足穂
  • 日本人の心の種を撒く――岡倉天心
  • セロひきのゴーシュ――茂田井武
  • 俗塵に染まらぬ自然児画家――熊谷守一
  • 猫に祈る――春日部たすく
  • 猫にオシッコをかけられても――津高和一
  • 君たちは猫でよかったね――アブラハム・リンカーン
  • 羊頭狗肉ニッポン亭を射つ――シュヴァイツアー博士
  • あとがき

著者について

原口緑郎 (はらぐち りょくろう)

英国ケンブリッジ大学で検定・CCEに合格。教職について後、中東でコンサルタント業務に十時。1994年、世界で唯一の大人感覚の、猫を題材とした新聞、月刊『ねこ新聞』を創刊。1年後、病気で倒れたが、約6年後、病をおして復刊。車椅子編集長として現在にいたる。

月刊『ねこ新聞』

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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