『新訂 一茶俳句集』
一茶の句には、猫を読んだものも。
「一茶(1763-1827)が生涯に残した約2万句の俳句の中から2千句を選んで制作年代順に配列し脚注を付した」本である。
私は俳句に特に興味があるわけではないが、一茶といえば、動物を詠み込んだ句が多いというイメージがあり、なんとなく買ってみた。
ちょっと意外だった。
こんなに気さくな人だったんだ、こんなに身近なものを詠んでいたんだ、随分庶民的で、しかも、視線がとても優しい・・・
と同時に、今までとんでもない勘違いを多くしていたことも知った。
たとえば有名な
我と来て遊ぶや親のない雀
これは単に、孤児の雀たちと一茶が一緒に遊んであげた句のようにボンヤリと解釈していたが、脚注を読んで、そんな単純な情景ではないことを初めて知った。
脚注によれば
「一茶8歳の時、継母を迎えた。(略)おらが春(政2)には、親のない子といわれた孤独な境遇を嘆く前文があり・・・(後略)」
となれば、この句に籠められた一茶の想いはひどく深い。
もうひとつ意外だったのは、猫の句がけっこう多かったこと。それも一茶50歳くらいから急に増える。それ以前の猫句は単にこの本に選ばれなかったのか、いや、多分違うだろう、恐らくこの頃からごく身近に猫と暮らすようになったのだ。
そして、突然ドキリとさせられる句。
猫の子の命日をとぶ小てふ(小蝶)哉
猫さん、死んでしまったんだ・・・
一茶は、でも、命日をちゃんと覚えてくれていたんだと、わずかに慰められる。
この句のあと、しばらく時間をおいてから、またポツポツと猫の句が詠まれている。猫さんの死から立ち直って、また猫さんを読めるようになったのかなと、勝手に想像して読みすすむ。そして、最後の猫句
猫の飯相伴するや雀の子
親のない子だった一茶と遊んだ雀の子が、ここでは猫と相伴して同じご飯を食べている・・・と、独りよがりの解釈だが、なんか嬉しかった。
「文献で詠われた猫たち>小林一茶」のページにこの本に収容された猫句を全部書き出したので、どうぞそちらもご覧ください。
(2005.9.2)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『新訂 一茶俳句集』
- 校注:丸山一彦
- 出版社:岩波文庫
- 発行:1990年
- NDC:911(日本文学)詩歌
- ISBN:4003022319 9784003022313
- 414ページ
- 登場ニャン物:
- 登場動物: