ディクソン『アフターマン』
副題:『人類滅亡後の地球を支配する動物たち』。
荒唐無稽な空想と、抱腹絶倒なデザイン、奇想天外な遊び心を、科学という調味料で味付けし、こってり豪華なフルコースに仕上げた、それが、ディクソンの『アフターマン』。
ディクソンは、サイエンスライター。5000万年後の地球の姿を想像し、まじめに科学的に、未来動物を予想しようとした。大プレート活動による大陸の移動、それに随伴する気候および環境の変化、絶滅する動物群、それに代わるべく進化する動物群。
有蹄類は絶滅した。シカ類が占めていた生態的地位には、ウサギ類が進化して進出した。ラバックの仲間である。原生のシカそっくりな体つき、けれども耳はやっぱり長い。
現生の肉食類—ライオン、オオカミなど—はほとんど絶滅し、かわって肉の味をしめたのはネズミ類だった。門歯は尖って完全に肉食性になり、四肢は細く長くなって、まるでオオカミだ。
大陸が移動するほどの地殻変動があれば、当然、あたらしく誕生する島もある。バタヴィア列島に最初に到達したのは、空を飛べるコウモリ達だった。彼らはたちまち定着して進化した。飛翔能力を捨て、地上や樹上に特殊化したり、さらに水中にもぐるものも現れた。見た目が変わっても、そこはやはりコウモリ。手(翼)で移動し、脚でつかむ習性は変わらない。だから地上に降りても、手で歩行し、脚でつかむ。逆立ちしたような恰好で歩き回ることとなった。
ところで人類は?
『人間以外の動物は、進化というゆったりした過程を辿って変化し、住んでいる環境にぴったり適応する。しかし人類は逆に、自分たちの当面の目的に便利なように環境を変えた。』
『しかしそうすることによって、自然選択がもたらしてくれるはずの長期的な恩恵を拒否し、・・・』
『資源が絶え・・・』
『適応力を完全に失った人類は、絶滅への一途を辿った。』
そう。
ディクソンが科学的に想像する5000万年後の世界とは、人類は絶望して久しい、動物たちの天下だった。
(だからいつも思うのだけど・・・本とは関係無い話だけど・・・いま日本では少子化を大問題視し、やれ生めよ増やせよ日本人満ち溢れよと老人どもがギャーギャー騒いでいるけど、それって結局、若者が減ると自分たち老人が受けるべき経済的恩恵(年金等)が減少・後退するかもしれないっていう、近眼的私欲だけが理由でしょ?そんな事より、日本人口を、日本列島内で賄われる資源だけで養える数に抑えておく事の方が重要なんじゃないかと、私は常々思っているのですが!世界人口はついに70億を突破したらしいし。)
なお、私が所有している本は古く、すでに絶版。
その後、ダイヤモンド社から再出版されたが(2004/07/08出版、ISBN:9784478860465)、それも今は新刊では手に入りにくいようです。面白い本であることは間違いないので、興味のある方はぜひ中古ででも。
(2011.10.25.)
*なお、ディクソン『新恐竜』も面白いので、ぜひ合わせてどうぞ!
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『アフターマン』
人類滅亡後の地球を支配する動物たち
- 著:ドゥーガル・ディクソン Dougal Dixon
- 訳:今泉吉典
- 出版社:太田出版
- 発行:1990年
- NDC:480(動物学)
- ISBN:4900416827(ダイヤモンド社版:9784478860465)
- 123ページ
- カラー
- 原書:”After Man – A Zoology Of The Future” c1981
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:空想上の動物たち