群ようこ『パンチパーマの猫』

群ようこ『パンチパーマの猫』

 

『先人達の知恵袋』清流出版刊改題。

群さんの本は面白い。
「パンチパーマの猫」を夢中で読み終えて、さて、私の「未読本の棚」にはもう一冊群さんの本があったはずだ、あれを続けて読もうと、未読の棚を探したのだが、無い。
再度上から下から、さらに右から左から、じっくりと眺め回したのに、やはり無い。
もう一冊あると思っていたのは思い違いか、そうよね、群さんの本はたいてい買ったらすぐに読んでしまうもの、未読で残っているはずないなあ・・・と、自ら納得。
少し他のことをしてからまた未読の棚に戻り、次に読む本を選ぼうとしたら・・・
あるじゃないか!
「オトナも子供も大嫌い」という本。
さっき探していた場所にちゃんとある。

「パンチパーマの猫」の中に、『衰えは神様からの贈り物:灯台もと暗し』という章がある。
その中で群さんは、歳を取ると物忘れするが、そればかりではない。
「なぜそこにあるものに気がつかないのか。これは不思議なくらいである。目の前にあるのに気がつかない」状態になると書いている。

たとえば、消しゴムを必死に探しても見あたらなかったのに、翌日見たら探していたその場所にあった、など。

群さんは「たしかに消しゴムの上にメモ用紙が半分ほどかぶさってはいたが・・」とわずかに言い訳しつつも、「一目見ればわかるのだ。いったい私の目はどこを見ていたのか。」と悩む。

それとまさに同じ事を、本を読み終えた私はやってしまったのだ。

私の場合も、探していた本は、たしかに著者名が隠れるような置き方ではあった。ティッシュの箱がちょうど文庫本の幅なので、私はしばしば本箱代わりに、ティッシュの空箱を便利に使う。今回も探していた本はティッシュの箱の中に立ててあったため、箱の高さでちょうど著者名が隠れていたのだ。
とはいえ、題名を見ればそれが探している本だとすぐわかるはずである。「群ようこ」の文字が隠れていたからといって、それが言い訳になるとは思えない。

ということは、私もすでに物忘れの歳にはいったらしい。
それではこれからは物忘れもひどくなる一方だろう。
やれやれ・・・

私と群さんはほぼ同世代。
正確には群さんの方がお姉さんなのだが、一回りまでは離れていないし、それに群さんが執筆されてから、単行本になり更に文庫本化され私が買うまでかなりの時間差があるから、私としては常にほぼ同世代の感覚なのだ。
なので群さんの身に起こる変化はそのまま私にも起こると思ってしまう。
いや、誰だって歳はとるから同じ事のはずなんだけど、群さんの場合はとくにそう感じてしまう。他の作家の場合は、ここまで同一視することはないのだけど。

それだけ私が群さんに(一方的に)親近感を感じているということだろう。
それは私だけではないに違いない。
群さんというのは、そんな不思議な魔力を持った作家だ。

「パンチパーマの猫」なんてタイトルの本だけど、残念ながら、猫はほとんど出てこない。
『猫の仔で親の気持ちを思い知る:親の心子知らず』、『動物たちも縁があってやってくる:袖すり合うも多生の縁』、『非常持ち出しの優先順位トップは、我が相棒:餅は餅屋』の3つに多少登場する程度である。

(2006.12.26.)

群ようこ『パンチパーマの猫』

群ようこ『パンチパーマの猫』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『パンチパーマの猫』
『先人達の知恵袋』清流出版刊改題。

  • 著:群ようこ(むれ ようこ)
  • 出版社:文藝春秋 文春文庫
  • 発行:2005年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:4167485125 9784167485122
  • 224ページ
  • 登場ニャン物:チビ
  • 登場動物:-

 


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群ようこ『パンチパーマの猫』

4.3

猫度

0.5/10

面白さ

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

3.0/10

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