群ようこ『音の細道』
猫好きで有名な群ようこさんのエッセイ集。
とはいえ、猫を主題にしたエッセイは2編のみ。
他は日常の些細な出来事を群さんならではのユーモアあふれる観察眼で書かれたもの。
猫エッセイその1は『老ネコの遠吠え』。
隣室のシャム猫、ビーちゃんも老いた。
もう御歳19歳である。
まだ元気なのだが、
とはいっても年齢は年齢であるから、そこここに不都合が起こっている。
(p.161)
さてその不都合とは?
猫エッセイその2は『ネコバカの歌』。
群さんは漫画家には変わった人が多いと切り出した後に、こう書く。
・・そのなかでぎょっとした部分があった。バーで知り合いと飼いネコ自慢をしていた漫画家が、自作の飼いネコのテーマソングを歌うという話だった。実は私も、・・・
(p.207)
自分も愛猫の歌を歌っていた、変人漫画家とかわらない、と告白。さらに群さんは続ける。「しいのテーマソング」は一曲ではない、三曲もある、しかもどの曲も、その歌詞が、爆笑もんというか、陳腐というか・・・。
大バカである。物書きとは思えないボキャブラリーの貧困さと、救いがたいネコバカ。この言葉に適当な節をつけて、歌うのであるから、こんな姿を見たら最期、誰もそばに近寄らないだろう。
(p.209)
そう、とてもとても「ネコバカ」な歌。(どんな歌詞かは、本をご覧下さいネ(^_^)
おそらく、日本中の愛猫家が、同じような内容の歌を、同じようなボキャブラリーを使って、家の中でこっそり高らかに歌っているのではないだろうか。
私ももちろん、歌っている。今うちは7ニャンだが、全員がテーマソングを持っている。いくつも持っている子もいるから、全部で何曲あるのか自分でもわからない。それを、猫を膝に抱いているときならまだしも、独りで家路へと急ぐ運転の最中に、しばしば歌っているのだ。
「レオちゃん、レオちゃん、世界一かわいくて、世界一お利口で・・」
とか、
「ト~ロちゃん、ト~ロちゃん、お目々がかわいいね・・・」
とか(恥)。
もう1編。猫は出てこないが、猫好きならではの勘違いを語った『運命の鈴の音』も群さんらしいエッセイだ。
(2009.1.2.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『音の細道』
- 著:群ようこ(むれ ようこ)
- 出版社:幻冬舎文庫
- 発行:2008年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:9784344410961
- 222ページ
- 登場ニャン物:ビー、しぃ
- 登場動物:-