群ようこ『きもの365日』
残念ながら、群さんの本なのに猫は出て来ません。が。
着物を365日間着続けるという、あまりに?無謀な企画をはじめてしまった群さんの、日記風エッセイ。
いつものかる~い乗りのエッセイとは文体からして違うような気がします。
それだけ群さんの意気込みというか覚悟が大きかったというのでしょうか、お腹にうんとちからをいれて、よし、やるぞ、という雰囲気が、ひしひしと伝わってきます。
が、・・・
群さんは一日中ちんとすまして座っていられるような、優雅なだけの奥様とはワケが違います。
自分一人の力で働いて家族(猫のしいちゃん)を養い、さらに実家のローンも払っている身です。
超売れっ子作家です。
ものすごく忙しい体です。
一日中着物と付き合っている閑は本来ないはずなんです。
最初のうちは毎日着ていましたけれど、やがてそうもいっていられない日が多くなり、それでも最後まであらゆる機会に着続けました。
着物というのは、噂には聞いていましたけれど(つまり私も着たことがない)、こうして読むと、本当に手間暇がかかる衣類なんですね。
洗っては縫いつけ、またほどいては洗い、着方ひとつでピシリと決まればだらしなく着崩れもする。
今の私たちから見れば、本当にややこしいようですけれど、でも良く読んでみると、ああなるほど、日本人の知恵と工夫がこれほどまでにぎっしりつまっていたのかと、驚いてしまいます。
洗濯機も乾燥機もミシンも無かった時代、取り外しできる襟や、体型にかかわらず着こなしだけで着られる形状、帯一本でがらりと変わる雰囲気、いくらでも使い回しができる裁ち方、よくぞここまでと感心するほかありません。
これこそ、日本人の心だったのだ・・・!
世界一清潔といわれた江戸の町。
徹底したリサイクルは、今の時代にこそ見習うべきもの。
この本を読んで私まで着物生活がしたいと一瞬思ってしまいました。
ほんの一瞬だけ。
次の瞬間には、無理だと笑ってしまいましたけれど。
着物と接する機会が皆無な生活を送っている私にとって、まず用語からして未知の世界でした。(
巻末に図付きの用語集がちゃんとあります)
群さんの悪戦苦闘に思い切り拍手を送りたいです。
お疲れ様でした!
(2005.9.1)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『きもの365日』
- 著:群ようこ (むれ ようこ)
- 出版社:集英社文庫
- 発行:2004年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:4087477002 9784087477009
- 319ページ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-