群ようこ『トラちゃん』

猫・その他の動物たちとの交流を、ユーモラスに語る。
群さんが、猫好き作家として超有名になった最初は、きっとこの本だろうと思う。
内容は、例の軽やかでユーモアに満ちた文章で、「金魚のよしこちゃん」「手のり文鳥のチビ」「十姉妹のビンタちゃん」「インコのピーちゃん」「犬のピーター君」「モルモットのハム子ちゃん」「ハツカネズミのモンジロウちゃん」などが紹介されている。
いずれも、群さん一家の動物たちに対する愛情に満ちあふれた、楽しく愉快なエッセイばかり。
その群さんの文章が断然光るのは、ネコのトラちゃん一族の章だろう。
3章、計95ページがネコの話に費やされている。
初代トラちゃんは、ある日突然群さんの前に現れた。
トラちゃんは仔猫を生み、群さん達はそれを優しく見守る。
トラちゃんの見事な子育て、それから、毅然とした最後。
その子猫達も、「トラちゃん」の名を引き継ぎ群さん一家と暮らしていく。
何しろ、群母親様が
うちで飼うネコは、トラかチビ。親が死んだらその名を受け継ぐ、トラ世襲制にするぞ。
と宣言されたのだ。
その上、群家には
『動物は絶対、親子をバラバラにしない。』・・・すべて責任をとって面倒をみなければならないのだ。
という家訓がある。
その結果、トラちゃん、コトラ1号~5号、マゴトラ1号~2号、と、ニャンコの数が次第に増えて・・・
この本を読んでまず思ったのは、なんて理想的な動物好き家族だろう、ということ。
こんな母親に育てられたら、動物や弱者をいじめる人間なんか育ちようがない。
おおらかで、くったくがなくて、でも動物の面倒はドーンと責任をとって最後まで世話をする。
是非、日本中の人間に、この一家の爪のあかを煎じて飲ませたいくらいだ。
皆さん、このように自然体のまま、動物たちと対等に暮らしましょうよ。
目をつり上げて「除菌、消毒、絶対清潔」と息巻いているお母さん達にも読んでほしい。
私のお薦めの1冊です。
(2002.7.7)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『トラちゃん』
猫とネズミと金魚と小鳥と犬のお話
- 著:群ようこ (むれ ようこ)
- 出版社: 集英社文庫
- 発行: 1989年
- NDC : 914.6(日本文学) 随筆・エッセイ
- ISBN : 4087494810 9784087494815
- 234ページ
- 登場ニャン物 : トラちゃん、チビ、コトラ1号~5号、マゴトラ1号~2号
- 登場動物 : 金魚、手乗り文鳥、十姉妹、インコ、犬、モルモット、ハツカネズミ
目次(抜粋)
- 金魚のよしこちゃんの話
- 手のり文鳥のチビの話
- 十姉妹のビンタちゃんの話
- インコのピーコちゃんの話
- 犬のピーター君の話
- 初代トラちゃんの話
- 二代目トラちゃんの話
- いたずら子ネコたちの話
- モルモットのハム子ちゃんの話
- ハツカネズミのモンジロウの話
- ハツカネズミの大所帯の話
- あとがき
- *解説 山本容朗