重松清『ブランケット・キャッツ』

馴染んだ毛布とともに、2泊3日でレンタルされる猫たち。
レンタル猫は、生まれたときからずっと、同じ数枚の毛布を使って眠る。その毛布さえあれば、どこにいても落ち着いて寝てしまう。それが、レンタル猫の最大の特徴であり、また、なければならぬ素質でもあった。
不可欠な素質がもうひとつ。
それは、すばらしく賢いこと。
そんなレンタル猫が、その店には7頭いた。
契約期間は2泊3日の3日間のみ。延長はできない。同じ猫を1か月以内に続けてレンタルすることもできない。もちろん買い取りもできない。しかも初期料金は安くはない。
にもかかわらず、客は途切れることはなかった。
『花粉症のブランケット・キャット』
子供のできない夫婦。子供なんていなくても、と思っても、40歳にさしかかれば、どうしても寂しさが積もってくる。ペットでも買おうか。子供ができると思って広めのマンションを買っちゃったけど、ここはペット禁止。しかたないなあ、買い換えないとだめかなあ。でも中古マンション市場は超低飛行中、売れて御の字、下手すれば足が出る。
売るあえに前に一度レンタル猫を試してみるか・・・。
『助手席に座るブランケット・キャット』
何も不満はないはずの会社だったのに。経営者には絶大の信頼を得ていたのに。あんなに良い同僚たちだったのに。
なぜ、・・・あんなことをしちゃったんだろう・・・?
『尻尾のないブランケット・キャット』
中学一年生のコウジは、いじめ問題で悩んでいた。父親は、・・・傍目にはとても良い父親に見えたかもしれないし、本人もそう自認しているようだったが・・・コウジのことは何もわかっていなかった。母親もわかっていなかった。コウジは、レンタル猫に「コウジ」と、自分と同じ名をつけてみた。
『身代わりのブランケット・キャット』
どこまでも優しく、でも、完璧に優しくなるには少し弱い人たち。そして、そんな弱さをも十分に自覚している人たち。
家族とはなにかを問う。
『嫌われ者のブランケット・キャット』
嫌われ者の大家は、同じく嫌われ者のレンタル猫を、定期的に借りてきては住民を監視した。
その大家に対抗する案として、同じ猫を借りてみようと言い出した間借り人の真意は?
『旅に出たブランケット・キャット』
猫と思えぬほど賢く、勇敢で、愛情にあふれ、そして、きっぱりと男らしい猫。
かっこいいけど・・・私としてはその後どうなったか非常に気になります。
『我が家の夢のブランケット・キャット』
リストラにあい、マイホームを手放さなければならなくなった家族。
この家を買ったときは、いずれ猫を買おうと約束していた。
約束を果たせぬなら、せめてマイホーム売却の前に・・・
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猫をレンタルして商売する、という案には、大々反対ですが、小説ということで、その点にだけ目をつぶれば、とても面白い、心温まる短編集です。
おすすめ本です。
(2011.7.22.)

重松清『ブランケット・キャッツ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ブランケット・キャッツ』
- 著:重松清(しげまつ きよし)朝日新聞出版 朝日文庫
- 出版社:朝日新聞出版 朝日文庫
- 発行:2011年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784022645951
- 381ページ
- 登場ニャン物:アン、クロ、コウジ、ロンロン、チャーミー、ザツ、タビー、ニャース
- 登場動物:-