ウェルズ『通い猫アルフィーと海辺の町』

通い猫アルフィーシリーズ第4弾。
クレアは思いがけず、海辺の家を相続してしまった。子供のころの思い出にあふれた、大きな家。ロケーションも最高。ただし、古くて、長年空き家だったため、全面的な修理が必要。
そんな大金どこにある?
しかし、さすがクレア。アルフィーの家族たちと知恵を寄せ合って、見事な解決策をひねり出した。
ということで、3家族全員で、改修の監督も兼ねて、海辺の家「海風荘」で夏休みをすごすことになった。計6人の子供たちは大喜び。もちろん、猫たち=アルフィーとジョージも一緒だ。
家の真ん前はビーチ。思い切り海で遊べる。妻たちは、子どもたちを見守りながら、家を整備し家具を入れ、ときには木陰で読書をしたりと、優雅で楽しいバカンスを送る・・・つもりだったが。
思わぬトラブルが生じる。隣の大きな家(クレアたちの家より大きい)に住むアンドレアと、その娘たちが、そりゃあ感じ悪いったら何の!
アンドレアは、元モデルのポリーでさえタジタジするほど派手なお化粧と、色鮮やかなドレスと、海辺の田舎町に不似合いなハイヒール、それから、腕には美しいペルシャ猫という姿で現れた。そしてイキナリ宣戦布告してきたのだ。
海風荘を買い取りたいの!いますぐ!
訳がわからず困るクレアたち。それでも最初は「変な人ね」と笑い飛ばそうとしたが、やがてアンドレアもその娘たちも、さらに飼い猫のシャネルまで、あらゆる嫌がらせをしかけてくるようになり、海風荘の3家族は困り果ててしまう。
そして、アルフィーも困っていた。あろうことかジョージが、シャネルに一目ぼれしてしまったのだ。ジョージはまだ子猫なのに、シャネルとは年が違いすぎるだろう、そもそもあんな意地悪な猫と、アルフィーは大反対だが、ジョージはどこまでも能天気に初恋に邁進する。
さあアルフィー、どうやってジョージの目をさまさせる?どうすればアンドレアたちの嫌がらせを止めさせられる?海風荘は、こんなに素晴らしい家なのに。
* * * * *
誰かがどこかの空き家にひどく執着して手に入れようと奔走するとき、ふつうの小説なら理由は決まっています。その空き家に大金か死体が隠されていて、その発覚を阻止するため、というのが定番中の定番。
なので、私も最初はそのパターンかと思ったのです。アンドレアの夫が「最近だれも姿をみかけていない」という情報もありますし、アンドレアが海風荘にこれほど執着するのは、
・夫が、いわくのある大金か何かを空き家のどこかに隠し、今は身を潜めている、または
・夫を殺害して庭に埋めた、
の、どちらかと思ったのですが、そういう「悪のニオイ」はどうもアルフィーに似合わない、なにかもっと良心的というか家庭的というか、決して後ろめたくはないがその人にとっては深刻な理由があるんだろうなと思って読み進めましたが、なかなかわかりませんでした。
そうこうするうちに、アンドレアの嫌がらせはますますひどくなります。ジョージの片思いもますますひどくなります。まあ、ジョージの場合は、皆に甘やかされて育った子猫らしく、あまりに楽観的で、勘違いも多すぎて、ほぼコメディなんですけれど。
この絶望的な状態を、アルフィーはどうやって解決したのでしょうか?しかも今回は、頼りになる彼女・タイガーもいないのに。ただの猫に過ぎないアルフィーの、猫ならぬ大活躍を、どうぞ楽しみにお読みください。
最後に。アルフィーの名言。
つまり、猫は自立するのに必ずしも人間が必要じゃないけど、人間は猫がいないと自立できないのだ。page350

ウェルズ『通い猫アルフィーと海辺の町』
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『通い猫アルフィーと海辺の町』
- 著:レイチェル・ウェルズ Rachel Wells
- 訳:中西和美(なかにし かずみ)
- 出版社:株式会社ペーパーコリンズ・ジャパン
- 発行:2018年
- NDC:933(英文学)小説 イギリス
- ISBN:9784596550897
- 398ページ
- 原書:”Alfie The Holyday Cat” c2017
- 登場ニャン物:アルフィー、ジョージ、タイガー、シャネル、ギルバート、リリー、ほか
- 登場動物: