ウェルズ『通い猫アルフィーの約束』

通い猫アルフィーシリーズ第5弾。隣に越してきた人の飼い猫は、ハナちゃん、三毛猫、日本出身!
長く空き家だった隣に、新しい家族が引っ越してきた。さっそく偵察に出かけるアルフィー。猫好きな家族ならいいな、新しい通い先になってくれるかも。もしすでに猫を飼っていたらもっといいな、友達は多ければ多いほどよいから!
越してきたのは、母親と、ティーンエイジャーの娘と、1匹の猫。
アルフィーのセンサーはたちまち反応した。この家族、何か大きな悲しみ・苦しみを抱えているようだ。どうしたら救ってあげられるだろうか?
アルフィーの息子(血は繋がっていないけど)のジョージも気にし出した・・・その猫を。ジョージと年齢は同じくらい。今までに見たことのない模様で、なんと白と茶色と黒の3色もあるのだ(つまり、三毛猫ね)。
しかし、このハナちゃんは完全室内飼いの猫で、アルフィーもジョージも窓ガラス越しにしか会えない。もどかしいったらありゃしない。
さらにもう一人、この家族に引き付けられた人物がいて、それは外ならぬ、ティーンエイジャーに成長したアレクセイだった。アレクセイの初恋?
いっぽう、アルフィーの彼女、タイガーには大変なことがおこっていた。アルフィーも、タイガーをママと慕うジョージも、なすすべもなく、絶望のどん底に突き落とされる・・・
* * * * *
前回のあとがきで、著者は日本旅行にいったことを書いていました。招き猫伝説の豪徳寺や、猫の島・江の島を訪れ、猫電車に乗って猫駅長のニタマちゃんにも会ったそうで、「日本は猫の天国」と絶賛していました。絶賛しながらも、神社等に捨てられた猫達の姿に心を痛め、でも地域ねことしてちゃんとお世話されていると知って胸をなでおろし、と、さすが猫本作家!
で、この日本旅行がよほど気に入ってくれたのでしょうか、今回の新顔猫は、にゃんと日本から来た三毛猫のハナちゃん。東京では完全室内飼いされていた、と、この設定の細かさも、さすが猫好き作家です、猫が好きでなければこんな設定にまで気が回りません。
しかもこのハナちゃん、すごくかわいくて、頭が良く、性格も申し分なし。まさにアイドル的存在です。
アルフィーシリーズでは、猫も人間も愛や恋の話が多くて、今回も恋愛事件と家族愛が中心となっています。今までは大人の人間同士の恋愛でしたけれど、今回はティーンエイジャーのウブすぎる恋愛、ほかに幼い子供たちの子供っぽすぎるケンカなど、全体的にファミリー色が強まっています。子猫だったジョージも反抗期を迎えて(?)、ウロウロしっぱなしのアルフィーパパがまた可愛い。
そして、アルフィーの深い悲しみ。
今回もアルフィーは大活躍します。悲嘆にくれる人間たちを救い、仲違いしていた人間たちを仲直りさせ、ひとりの老人の命さえ救います。
でも、読み終えた私はちょっと悲しいままです。だってアルフィー自身の悲しみは、最後まで完全には癒されませんから。癒されようのない悲しみをまた負ってしまったのですから。
考えてみればアルフィーって、すごく恵まれている反面、何回も絶望的な悲しみも味わってきた猫なんですよね。いっしょうけんめい悲しみ、いっしょうけんめい考え、いっしょうけんめい他人や他猫のためにつくして、そして、本心から自分の幸せを味わう、すばらしい猫です。
アルフィー、世界中で愛されて当然です。

ウェルズ『通い猫アルフィーの約束』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『通い猫アルフィーの約束』
- 著:レイチェル・ウェルズ Rachel Wells
- 訳:中西和美(なかにし かずみ)
- 出版社:株式会社ペーパーコリンズ・ジャパン
- 発行:2019年
- NDC:933(英文学)小説 イギリス
- ISBN:9784596541260
- 383ページ
- 原書:”Alfie In The Snow” c2018
- 登場ニャン物:アルフィー、ジョージ、タイガー、ハナ
- 登場動物: