ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

 

通い猫アルフィーシリーズ第6弾。新しい家族は、なんと、子犬!?

大切なガールフレンド・タイガーを亡くしたアルフィーは、なんとか立ち直りつつあった。エドガー・ロードはここのところ平和で、アルフィーの家族たちにも大きな問題はない。

なのに。

なぜ、犬!?アルフィーとジョージという完璧な猫が2ニャンもいるというのに!

迎えたのはマットとポリーの家族。アルフィーたちがメインで暮らすジョナサン+クレアの家でなかったのは幸いだけど、ポリーたちは共働き。必然的に子犬は日中はクレア達の家で過ごすことになる。だってクレアは今、専業主婦なのだから。

猫達は戸惑ったが、こうなったら仕方ない。アルフィーも子犬の世話をすることにした。そしてジョージも。ジョージは、「年上のいとことして」犬のピクルスに立派な猫になる方法を教えはじめたのだ。

子犬は、生後2ヶ月のパグだった。名前はピクルス。そして、名前通り、そりゃあ手間のかかる子だった!

(英語の”pickles”には、「酢漬け・漬物」という意味のほか、「窮地・まずい事態・混乱状態」、さらに「いたずら者」などの意味があります。)

子犬の世話だけで疲労困憊なアルフィーに、さらに心配事が襲う。今度は人間の問題だ。その傍ら、子猫だと思っていたジョージはしっかり成長していた。アルフィーパパに対して秘密を持つようになり、そちらもアルフィーは気がかりで仕方ない。

そして、アルフィーの前に現れたのは、なんと・・・!!

ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

*   *   *   *   *

ジョージが立派な大人猫に成長しているのが嬉しい一冊です。アルフィーが父親業を見事にこなしている証拠。人間のパパたちにアルフィーの爪の垢を飲ませてやりたいくらい。それともアルフィーは猫だから、爪の抜け鞘を飲ませてやろうかな?

そして、ピクルス!

能天気で、まさに天真爛漫。いつか自分も「猫」になれる日を夢見て、ジョージの真似をし、アルフィーを追いかけ、クレアたちを翻弄します。ピクルスがどんな悪戯をしても、怒られるのは結局、最年長者のアルフィー。少々不満だけど、責任感の塊りみたいな猫ですから、猫とは思えぬ献身さで子犬のお世話をします。パパとしてジョージのお世話も続けます。さらに、周囲の人間たちの幸せへのお手伝いも。相変わらず多忙な猫なのです。

今回は、今までのシリーズのように、「絶望的に苦しんでいるひとつの家族」は出てきません。もっぱら動物達の微笑ましいドタバタです。毛布の下に隠れてたアルフィーたちが見つかる場面では声に出して笑っちゃいました。想像するだけで可笑しいし、楽しくなってしまいます。

最後は、いつも通り、ハッピーエンドです。何もかもうまくいきすぎるくらい、まるく収まります。

もしこのシリーズで不安要素があるとすれば、それは唯一、アルフィーの年齢ですね。作品の中に12歳の猫が出てくるのですが、もうすっかり年寄り扱いです。アルフィーもじきにそういう年齢になるはずです。著者様、あまりアルフィーを酷使しないで、そろそろもう少しゆっったり暮らさせてあげてください。でも引退はさせないでください。

最後に、アルフィー語録。

そもそもみんな幸せでいるべきなのに、そうじゃないのが残念でたまらない。猫がこの世界をコントロールしていたら、ぜったいみんな幸せになっていた。
page379-380

私もそう思います(=^・^=)

「通い猫アルフィーシリーズ」まとめ

ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『通い猫アルフィーのめぐりあい』

  • 著:レイチェル・ウェルズ Rachel Wells
  • 訳:中西和美(なかにし かずみ)
  • 出版社:株式会社ペーパーコリンズ・ジャパン
  • 発行:2020年
  • NDC:933(英文学)小説 イギリス
  • ISBN:9784596541406
  • 407ページ
  • 原書:”A Friend called Alfie” c2019
  • 登場ニャン物:アルフィー、ジョージ、ギルバート、ハナ、ごみばこ、アリー、タイガー、スノーボール、他多数
  • 登場動物:犬(パグ)

 

著者について

レイチェル・ウェルズ Rachel Wells

『通い猫アルフィーの奇跡』が英紙サンデー・タイムズのベストセラーリスト入りを果たす。

「通い猫アルフィーシリーズ」まとめ

中西和美(なかにし かずみ)

おもな訳書に、ウェルズ『通い猫アルフィー』シリーズ、ハークネス『魔女の目覚め』、クレア『事件記者ソフィ贖罪の逃亡』、マッケナ『そのドアの向こうで』など。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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ウェルズ『通い猫アルフィーのめぐりあい』” に対して4件のコメントがあります。

  1. yukiyo より:

    とても楽しくそしてアルフィーに励まされながら読み終えました。
    タイガーとの別れが自分の状況と重なっていましたしね。

    アルフィーは本当に素晴らしい猫です。というか猫本来の素晴らしさというのか。
    あんなにも周りの人や動物を寛大に受け入れて優しくして
    だれ一人置いてきぼりにしない・・・。
    いつまでも描き続けてほしい作品です。

    ピクルスの名前の意味がやっと分かりました!そういう事だったんですね。
    あの仔の「なんで?」が可愛くて好きです。
    いつか猫になれるのかな?(笑)

    1. nekohon より:

      幼かったジョージがやっと成長したとおもったら、今度は子犬!
      休む間もないアルフィーパパ、お疲れ様です。

      「猫本来の素晴らしさ」、はい、どんな猫もアルフィーみたいにすばらしいんです。ただ猫は犬と違って自己アピールしないから、愚かな人間の多くが気づかないだけで。
      私たち猫菌保有者はとっくに気づいていますけれどね!

  2. catwings より:

    私も丁度先日に読み終わりました。

    nekohonさんの、
    「もしこのシリーズで不安要素があるとすれば、・・・」に、1000%同意です。
    少しずつアルフィーや他の猫たちが成長し、年取る中、アルフィーが最後に幸せに旅立つシーンとかが出てきそうで怖い気がします。

    まあ、そうなる前に後何冊か出版されると思いたいですが・・・

    1. nekohon より:

      『三毛猫ホームズ』のように永遠に歳をとらないならよいのですけれどねえ。
      「その時」までに、何冊も出してほしいと私も願っています。

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