米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

 

『ヒトのオスは飼わないの?』の続編。

二部構成となっています。

第一部 ヒトのオスは飼わないの?

『ヒトのオスは飼わないの?』は、1998年から雑誌に連載され、2001年にまず単行本として出版されました。第一部はそのまま、『ヒトのオスは飼わないの?』の続きとなっています。

猫達、犬たちに翻弄されながら、アルツハイマー病の始まった母親の介護もしながら、米原万里さんは精力的に活躍していきます。あふれんばかりの愛情。

行方不明になった愛犬ゲンを、今なお探し続けています。4日に一度、動物管理事務所に電話して、ゲンが保護されなかったか確認します。通訳という職業柄、全国あちこちに出張する生活ですが、どんな時でも、海外からさえも、4日に一度、動物管理事務所に電話をいれます。これでは事務所の職員達もゲンのことを気にかけずにはいられません。ゲンに似た犬が連れてこられると、電話の向こうの声も明るく、今度こそと米原さんに報告します。

でも、その都度、期待は裏切られてしまうのです。それでも諦めきれない米原さんなのでした。

その一方で、猫達にもいろいろあります。
また子猫を拾ったり。
愛猫ソーニャがお産したり。
子猫たちの里親探しも大変です。

さらに、高齢な母親の問題。
鎌倉に住む妹と協力し合って介護しているものの、東京と鎌倉では、移動だけでも大変。
ついに鎌倉に家を建てて引っ越すことに。

猫+犬+人、合計9名の大移動は、もちろん、そりゃ大変でした・・・

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

第二部 終生ヒトの雄は飼わず

主に米原さんの家族(祖父・父母)や幼少期、仕事のことなどが書かれています。犬猫の話はありません。

なんといっても感慨深いのが、最後に置かれたエッセイです。たった4ページの、短いエッセイです。しかし今読むと、その内容に、ドキッとしないではいられません。

その最後のエッセイは、著者自身による「私の死亡記事」なのです。

米原万里さん(よねはら・まり=元作家、NPOグループ・ホーム「アルツハイム」代表)が、二〇二五年一〇月二一日未明に息を引き取った。享年七五。
page225

にはじまる文章なのです。享年七五・・・

ご存知の通り、米原さんは、2006年5月25日に亡くなりました。享年わずか56歳でした。

米原さんは、どんなつもりであの最後のエッセイを書かれたのでしょうか。予感があったのでしょうか。単なる冗談のつもりだったのでしょうか。なんともやるせない気持ちになります。ニュースを見た時はわが目を疑ったのを覚えています。本当に惜しい方を亡くしてしまいました。あまりに早い死でした。

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『終生ヒトのオスは飼わず』

  • 著:米原万里 (よねはら まり)
  • 出版社:(株)文芸春秋 文春文庫
  • 発行:2010年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:9784167671051
  • 255ページ
  • 登場ニャン物:無理・道理・ソーニャ・ターニャ・ペペ・龍馬・志摩・耶麻(やま)・他
  • 登場動物:ゲン、ノラ、モモ、他(犬)

 

目次(抜粋)

第一部 ヒトのオスは飼わないの?
第二部 終生ヒトの雄は飼わず
単行本解説  金田育子
付録
解説  宇野俶子

著者について

米原万里(よねはら まり)

ロシア語会議通訳、エッセイスト、作家。1950年生まれ。59~64年、在プラハ・ソビエト学校に学ぶ。東京外国語大学ロシア語科卒業、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。80年設立のロシア語通訳協会の初代事務局長を務め、95~97年会長。著書に『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店、新潮文庫。読売文学賞受賞)、『魔女の1ダース』(読売新聞社、新潮文庫。講談社エッセイ賞受賞)、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川書店、角川文庫。大宅壮一ノンフィクション賞受賞)、『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社、集英社文庫。Bunkamuraドゥマゴ賞受賞)など。2006年5月、逝去。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』

5.7

猫度

5.0/10

面白さ

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

5.0/10

米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』” に対して1件のコメントがあります。

  1. nekohon より:

    【推薦:まめまま様】
    ご存じ、「ヒトのオスは飼わないの?」の続編です。
    反則とは思いますが、巻末の「毛深い」家族たちのその後 の巻から読んでしまいました(汗)
    第一部がおなじみの犬猫エッセイ、第二部が米原氏のご家族の思い出等の二部構成になっています。
    第一部の大きなイベントが、鎌倉へのお引っ越し。終の棲家としての新居。
    米原氏の思い、つぶやき。
    これが普通に読めるエッセイならそのまま言葉通りに楽しく読んでしまうことでしょう。でも今は亡き米原氏が語っていると思うと、また違う感慨が湧いてきます。
    本当に惜しい!なぜよりによって?どうして?と
    そんな思いにとらわれつつ・・泣き笑いですよ~~。
    でも、相変わらずの枠にはまらない自由な思考、知的な美人が親バカ道まっしぐら!
    悲しみを新たにしますが、心地よい読後感です。
    行方不明のゲンちゃん、最後に会わせてくれるくらいの粋な計らいを神様にして欲しかった。
    没後1年なんですね。ご冥福をお祈りします。
    (2007.6.10.)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

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