花輪莞爾『猫はほんとうに化けるのか』
学者が書いた、学者らしい猫本。
この本は、1990年に『猫鏡』の題で平凡社から出版されたあと、1997年に『猫学入門』に改題され小沢書店で出版された本の、文庫本化である。
読みながらまず感じたのは、これは非常に頭と記憶力が良い文学者の本だ、ということ。科学者ではない。理系ではない明らかに文系の、乱読の読書家、という印象。あくまで私のイメージです。実際には著者がどんな方なのか、まるで存じ上げていないし、申し訳ないが他に本も読んでいません。
内容は、一応「愛猫篇」「恐猫篇」「妖猫篇」と大きく3つにわけられているが、テーマごとにきっちり内容が分かれているわけではない。また、化け猫の話もでてくるが、そればかり集めたというわけでもなく、題名的には当初の『猫鏡』が一番雰囲気を伝えているような気がする。猫について色々語りながら、あちこちの文献から引用し、知識や雑学を集大成した本である。ただし、科学的根拠などはあまり気になさっていないようで、引用も文学的な文献からが多い・・・化け猫話を延々とするくらいだから、当然か?フランスの文豪ユーゴーの「霊界通信」や、夢に出てきた猫の記録なども出てくる。猫についての科学的考察を求めている人には勧められないが、雑学としての猫知識を求めているのなら、楽しく読めるだろう。文学に興味がある人にもお勧め。
花輪莞爾氏は、東大で19世紀フランス文学専攻、今は國學院大学文学部教授である。
(2003.02.21)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫はほんとうに化けるのか』
小悪魔たちの謎・不思議
- 著:花輪莞爾 (はなわ かんじ)
- 出版社:徳間書店 徳間文庫
- 発行:2002年(1990年「猫鏡」・1997年「猫学入門」加筆改題)
- NDC: 645.6(畜産業・家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4198917558
- 284ページ
- 登場ニャン物:コロ、ミミ、ショコラ
- 登場動物: -
目次(抜粋)
- はじめに
- 愛猫篇―かわいすぎる彼らの生態の秘密
- 和猫(日本猫)たちが消えていく
- 平安時代にはもうペット
- その他
- 恐猫篇―愛から不信へ。なぜ彼らは得たいが知れないか
- どうして猫を見ると、人は悲しく惨めなのか
- 三十万体もの猫ミイラ
- その他
- 妖猫篇―やっぱり魔性の生き物?世界の化け猫話の真贋
- 身の毛もよだつ中国の猫鬼
- 老猫飼いの大流行
- その他
- 文庫版あとがき
- 参考文献一覧