町田康『猫にかまけて』

町田康『猫にかまけて』

 

ゲンゾーの「恐怖のサルーン」とは?

町田康さんは、ミュージシャンで作家。

パンク・ロック歌手、なんて聞けば、それこそ突っ張ったお兄さんみたいなイメージだけど、どうしてどうして!彼の中身は、どうしようもないほど心優しい猫好き!!

この本の出だしからして

自分は猫が好きである。
どれくらい好きかというと、例えば往来をしていて、駐車中の車の下に猫がいるのを見つけたとする。と、もういけない。その場にかがみ込み、見知らぬ通りすがりの猫に、文字通り字義通りの猫撫声で、可愛いな、かしこいな、と語りかけ飽かぬという体たらくで、まったくもって浅ましいことこのうえない、・・・(後略)
page11

あまりに猫好きなので、大事な用事があるときでも、猫を見かけてしまったが最後、そこから動けなくなり、結果、遅刻して信用を無くし、あるいは契約破棄されるという。だから年中貧乏をしているのも猫のせいだとまでいう。その「猫」とはもちろん、往来の見知らぬ猫ばかりではない。もちろん自宅にも愛猫たちが待っているのである。その猫達をかまわないといけない。愛猫たちの名はココアとゲンゾー、さらにヘッケとナナ(奈奈)も参加。

「年中貧乏」な理由が猫ばかりかまっているから、と言われても、最初はまさかそんなこともあるまいと思って読んでいるのだが、次第に、それはまことかもしれない、この様子では仕事をしているヒマなんてほとんどないのではないかと納得してしまいそうになる(本当はお仕事もちゃんとされているわけですが。でなきゃこんなに音楽だ作家だと活動できるはずありません!)。

猫じゃらしなどをふってやると格別で、狂気して飛びかかってくる。
ナナも例外ではなく、ことのほかこれが好きで、自分も多忙をきわめる身なので、一日に四時間くらいしか振ってやれないが、喜ぶので可能な限りこれを振ってやる。
page183

・・・って、子猫相手に一日四時間も猫じゃらしを振っていれば、ふつうは十分すぎるほど十分じゃありませんか?(笑)

とまあ、このくらい猫好きなお方なのだ。だから当然、不幸な子猫に出会ってしまえば、放っておくことなんかできない。連れて帰り、動物病院へ駆け込み、食べられるものを探して奔走し、薬をのませ、体を拭き、撫でて祈って、寝ずの看病をする。

全体的には、パンクミュージシャンらしい、ユーモアの効いた文章で、表現も面白く、猫との会話は誰でも笑っちゃうような内容で(いつも猫に命令されては一生懸命言い訳している)、明るく楽しい本だ。さすが数々の賞を総なめにした作家だと思う。

が、切なく、涙なしには読めない箇所も2か所あって・・・もうお判りでしょう、猫を看病する描写。ヘッケちゃんとココアちゃん。読む方も苦しくなり、たまらなく悲しくなってしまい、「神様、どうかお願い・・!!」と叫びたくなる。

笑いと涙が共存している一冊。。猛烈おすすめです。ぜひどうぞ。
(人前ではあまり読まないでね。笑ったかと思うと大泣きしてる変人と、周囲に引かれます?)

(ゲンゾーの「恐怖のサルーン」とは何か、それは読んだ方のみのお楽しみデス。請う許し。)

町田康『猫にかまけて』

町田康『猫にかまけて』

町田康『猫にかまけて』

町田康『猫にかまけて』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫にかまけて』

  • 著:町田康(まちだ こう)
  • 出版社:株式会社講談社 講談社文庫
  • 発行:2010年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:9784062758956
  • 283ページ
  • カラー口絵
  • 登場ニャン物:ココア、ゲンゾー、ヘッケ、ナナ(奈奈)
  • 登場動物:

 

著者について

町田康(まちだ こう)

作家・パンク歌手。高校時代からバンド活動を始め、伝説的なパンクバンド「INU」を結成、’81年『メシ喰うな』でレコードデビュー。’92年に処女詩集『供花』観光。96年に発表した処女小説『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、ドウマゴ文学賞を受賞。2000年『きれぎれ』で芥川賞、01年『土間の四十八滝』で荻原朔太郎賞、02年『権現の踊り子』で川端康成文学賞、05年『告白』で谷崎潤一郎省、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。ほか『この世のメドレー』『常識の路上』『絵本 御お伽草子 付喪神』『スピンクの壺』『ゲケイキ』他、著書多数。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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町田康『猫にかまけて』

9.6

猫度

9.8/10

面白さ

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.5/10

町田康『猫にかまけて』” に対して1件のコメントがあります。

  1. nekohon より:

    【推薦:きな様】
    まりさんと同じ頃、私も・・・。
    今日届いていまさっき読み終わりました。
    涙ぼろぼろです。
    中表紙というのか、ミルクココア色のあの紙色はココアちゃんに捧げた色合いなのかしら。
    かおさん、猫まねきさん、たろんさん、お奨めありがとうございました。
    『ノラや』 『ミーのいない朝』と並べておいておこうと思います。
    (2004.12.7)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

  2. nekohon より:

    【推薦:まり様】
    かお様がこちらの掲示板で教えて下さった町田康氏の「猫にかまけて」届きました!書き込みを拝見してすぐTOPページから本を買い物カゴに入れたのは私です。
    ネタバレがない程度に・・・
    本の帯はいつも邪魔で捨ててしまう私ですが、この本のは捨てられませんっ!こんな帯は反則です。でも読みづらいのでカバーごとはずして読みました。
    (2004.12.7)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

  3. nekohon より:

    【推薦:たろん様】
    猫手でも連載してませんでした?
    雑誌購入時には読んでいましたが氏の病気猫に対する愛と苦悩に(これもネタバレ?)涙なしでは読み続けられませんでした。猫手では唐突に終わりましたが、それも氏の猫への愛の深さが原因かと勝手に推測してまた涙したものです。
    でも全般にユーモアが漂って面白かったですよ。
    (2004.12.1)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

  4. nekohon より:

    【推薦:猫まねき様】
    『猫にかまけて』、私も買いました。(まだ半分くらいしか読んでいませんけれど)
    雑誌『FRAU』の連載を1回読んだだけで「本が出たら必ず買う!!」と誓って発売を待ち望んでいました。
     町田康さんのほかの本は、“町田節”といわれるほど一種独特で正直言って普段は読まないジャンルなんですけれど、同じ“町田節”で猫のことを書くと、これが面白いんです。たとえば「猫の行動」の名付けのセンスといったら。猫を対等(年長猫は格上)の同居者と見ているところも好ましいです。
    これ以上書くとネタバレになりそうですね。
    ちなみに登場猫は、『ココア、ゲンゾー、ヘッケ、ナナ(奈奈)』です。
    (2004.12.1)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

  5. nekohon より:

    【推薦:かお様】
    パンク・ミュージシャンであり、詩人、作家である町田康氏の「猫にかまけて」を読み始めました。
    氏の猫との交流を、氏独特の感性で綴ったホロ苦くも、胸打つ内容です。
    (2004.12.1)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

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