乙一『しあわせは子猫のかたち』

乙一『しあわせは子猫のかたち』

 

『失踪HOLIDAY』に収容。

家を出て一人暮らしをしたかった、誰も知らぬ土地で孤独に死にたかった。
だから大学もわざわざ実家から遠い場所に決めた。

幸いその土地に伯父が古い家を所有していたので、そこに引っ越すことにした。
何年も打ち捨てられていた空き家・・・を想像していたのに、その家はつい最近まで人が住んでいた気配があった。カメラ好きの若い女性だったらしい。家財道具もほとんど残されていた。買いそろえる必要がなかったのは助かったが、・・・その女性は強盗?に殺害されたらしい。だから伯父も黙っていたのだ。

引っ越してすぐ、白い子猫が、当然な顔をして入ってきた。殺された女性の飼い猫だったらしい。一人暮らしのはずが、子猫との共同生活になってしまった。

いや、もうひとり・・・たしかにいる・・・誰かが。

その後、おもわぬ方向にストーリーが展開していく。

乙一『しあわせは子猫のかたち』

乙一『しあわせは子猫のかたち』

* * * * *

書かれている内容をよく考えれば、けっこうホラーなストーリーではあります。
幽霊とか、殺人とか。

でも、読んでいる間は、ぜんぜんホラーではありません。むしろほんわり暖かい雰囲気です。
愛らしい子猫。引っ込み思案の大学生。世の中をあきらめたような冷めた視線は、しかし、むしろ若者らしい青くささに満ちています。幽霊も、怖くないどころか、お姉さんのようにやさしく、親しみやすく。

読み終えて、これはファンタジー小説か?ミステリー小説か?迷いましたが、一緒に収録されている『失踪HOLIDAY』と合わせ読んで、とりあえずミステリーに分類することにしました。
でもミステリーっぽくはありません。ふわりとした雰囲気の短編です。

本のタイトルになっている『失踪HOLIDAY』の方が長く、ミステリー的要素も強いです。こちらも面白い作品でした。主人公は、まだわずか14歳ながら、複雑な家庭環境に育ったせいか、必死に突っ張って気を張っている少女です。残念ながら猫はまったく出てきません。わずか2か所、「未来の青い猫型ロボット」(page58)と「彼女の猫的な気まぐれさ」(page75)に「猫」という漢字が使われているだけです。

乙一『しあわせは子猫のかたち』

乙一『しあわせは子猫のかたち』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『しあわせは子猫のかたち』
『失踪HOLIDAY』に収容

  • 著:乙一(おついち)
  • 出版社:株式会社角川書店 角川スニーカー文庫
  • 発行:2001年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784044253011
  • 全238ページ中、6-56ページ
  • 登場ニャン物:無名
  • 登場動物:

 

目次(抜粋)

しあわせは子猫のかたち -Happiness is a Warm Kitty-
失踪HOLIDAY -しっそうxホリデイ-
あとがき

著者について

乙一(おついち)

17歳のとき『夏と花火と私の死体』で、第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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乙一『しあわせは子猫のかたち』

6.7

猫度

4.0/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

7.5/10

乙一『しあわせは子猫のかたち』” に対して1件のコメントがあります。

  1. nekohon より:

    【推薦:にゃぐ様】
    『失踪HOLIDAY』(こちらが本のタイトルです)の中の 1つとして載っています。
    どうにも自分に自信が無い主人公が大学入学と同時に一人暮らしを始めます。伯父の所有する一軒家に…。
    以前の住人が事故死し、残していった家具付きのお部屋。そこに白い子猫が上がり込んで来ます。まるで以前の飼い主『雪村サキ』がまだ居るかの様に…。
    猫特有の不思議な力?を厭味無く且つ 爽やかに描かれているところに好感が持てますわ。
    乙一作品は おどろおどろしい物と、この小説のように ちょっとセツナイ小説に分かれるのですが、今は亡き女主人に戯れる子猫の描写やその後の様子が 、暖かい視線で描かれているちょっと胸が熱くなるお話しです。
    (2004.10.28)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

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