宮崎学『となりのツキノワグマ』

宮崎学『となりのツキノワグマ』

 

クマがこんなに写っていいのか!?

帯にも書いてある本文。

 とりわけ夏以降、秋から冬にかけて、連日連夜、おびただしい数のクマが写った。しかも、大きな個体や小さな個体、親子連れ、さらには、かつて人間に捕獲され、耳にタグをつけられた個体など、さまざまなものが現れた。日中には、軽装の観光客がハイキングを楽しんでいたまさにその現場で、夜にはクマたちが、わが物顔に闊歩していたのである。
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宮崎学『となりのツキノワグマ』

宮崎学『となりのツキノワグマ』帯

ツキノワグマは希少動物、近い将来、絶滅が心配されている・・・というのが、一般的な定説。テレビでも新聞でも、常にその論調で、だれも疑わない。

しかし、著者は疑ってみた。

生息数はだれがいつ、どのような方法で算出したもので、本当に現状を反映しているのか(中略)そして何より、そう言っている人たちは実際にどれだけ山に入り、自分の目で確認をしているのか。(中略)
少なくとも関東・甲信越の山々を見る限り、決して「荒廃」などしていないし、近い将来、ツキノワグマが絶滅するとも思えない。(後略)
はじめに

山にカメラを仕掛けても、昔はクマは写らなかった。「1970年代~1980年代半ばにかけて、さまざまな標高のけものみちを撮影したが、クマはまったく写らなかったのだ。(page11)」と、著者自身もそれは経験している。

しかし、その後、山の様子は変わった。昔は盛んだった林業が不振になり、植林地帯は間伐も枝打ちもされぬまま放置されている。耕作放棄された農地はたちまち草山となり低木が生い茂り森になっていく。植生が変われば生息する動物たちも変化する。昔はあれほどいたノウサギがめっきり減った。そのかわり、幻獣とされていたカモシカは食害がいわれるほどに増え、そして、著者曰く、クマも増えた!大幅に!カメラに、写る写る。

宮崎学『となりのツキノワグマ』

宮崎学『となりのツキノワグマ』

面白いのが、著者発明の「クマミール」「マタミール」。どんな装置かは、本をご覧されたし(汗)

クマだけでなく、クマが残したフィールドサインの写真も多く掲載されている。私にはこれらの方がむしろ興味深い。私自身、ツキノワグマが毎年、庭の柿の木に来るような環境で暮らしているので。

クマが大好きな山の実りの数々。ドングリやコナラばかりではない。
クマはぎ。クマによって皮をはがれた木たちの画像。
クマ棚。これは私も毎年必ず目にする。あちこちに。
その他。

宮崎学『となりのツキノワグマ』

クマ糞の数々。こういう写真、私には実に興味深い。

私がおもしろく見入ってしまったのは、「四季折々、ずら~りクマ糞 糞を見れば、食べ物がわかる!」。いや~、面白い☆こういう写真集、すごく貴重だし、クマが日常的に出没するエリアに住む住民にとっては、一番役に立つ情報でもある。クマ糞なんて、そこら中に落ちていますからね。この子はヤマザクラを食べたんだ~、とか、何を食べたの?下痢っぽくて心配、とか。ま、普通の人はクマの糞なんて興味ないかもしれないが。

願わくば。九州のクマ、実は絶滅していなかったとかなら嬉しい!四国のクマ、絶滅しませんように。

宮崎学『となりのツキノワグマ』

膨大な数の熊棚。でも、うちの周りでもひと晩で複数の熊棚ができるのはふつうにあることで、それを考えれば、クマの家族が1か月山で活動すればこのくらいの数の熊棚、当然だと思う。

宮崎学『となりのツキノワグマ』

宮崎学『となりのツキノワグマ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『となりのツキノワグマ』

  • 著:宮崎学(みやざき まなぶ)
  • 出版社:株式会社 新樹社
  • 発行:2010年
  • NDC:489(哺乳類・ネコ科)
  • ISBN:9784787586056
  • 159ページ
  • カラー
  • 登場ニャン物:偶然映った1ニャン
  • 登場動物:ツキノワグマたち、ニホンカモシカ、イノシシ、ほか野生動物達

 

著者について

宮崎学(みやざき まなぶ)

ウェブサイト=「森の365日」http://www.owlet.net
主な著書に『鷲と鷹』、『フクロウ』、『死』、『アニマル黙示禄』、『アニマルアイズ』全5巻、『森の写真動物記』全8巻、『かわりゆく環境・日本生き物レポート』全4巻、ほか。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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↓うちの庭の柿を食べた後、残された熊糞。

熊糞

柿を食べた柿色の糞

うちの柿の木にも熊棚。

熊棚

慣れれば、熊棚はすぐ見つけられます

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