『世界の美しい野生ネコ』
タイトル通り、野生ネコ達の姿があまりに美しい一冊。
世界の野生ネコ科35種全種、プラス、イエネコが紹介されています。アンデスキャットとチーターだけは全身写真、その他のネコたちはまずお顔のアップ写真から解説がはじまります。アンデスキャットは希少種ですし、この種だけ写真も少しボケていて、いかにも遠くからズームで撮りましたって感じなのですけれど、他のネコ達は鮮明で、輝くほど美しい!チーターだけなぜお顔アップがないのか分かりませんが、大きな疾走写真はありますからそれで良しとしましょう(?)。
今日本で話題のマヌルネコやスナネコももちろん掲載されています。マヌルネコは、動物園にいる子たちと、まさに同じそのまんまなお顔。それに引き換え、野生のスナネコたちは眼光鋭く、ちっちゃいながらも野性味たっぷりで、やはり動物園の子たちとは随分雰囲気が違います。
ウンピョウの大あくび写真もすばらしいですね。ウワサの長大な犬歯がこれでもかとむき出しに。ウンピョウこそ、現代版サーベルタイガーといわれる理由が、この1枚の写真で誰でも一瞬でわかってしまいます。ウンピョウはサーベルタイガーの直径の子孫では無いのですが。
ちょっと珍しいのは、文章が「です・ます調」であること。こういう本はたいてい「である調」なんですけれどね。
日本のヤマネコたちに関しては、イリオモテヤマネコはわずか3行、ツシマヤマネコにいたっては「ベンガルヤマネコは対馬列島でも見ることができます」の1行だけで「ツシマヤマネコ」という名称さえ出てきていないのは寂しいですが、それは私が日本人だから。執筆者サンクイスト夫妻はアメリカ・フロリダ州在住、写真家ホイットテイカーは英国在住だそうで、世界的な目からみればイリオモテヤマネコもツシマヤマネコも全然「特別な存在」ではないんだな、と再確認させられちゃいました。
しかしアメリカ在住の著者ならではの指摘もあります。たとえば『「もう1つのトラ」:野生のトラと数はほぼ同じでも、保全価値はほとんどない』(page31)というコラムでは、とても重要な疑問を投げかけてくれます。アメリカではなんと、推定3000~4000頭ものトラたちがペットとして飼われているそうです。野生のトラの数は推定3500頭しかいないというのに。
驚いたことに、米国ではトラは家畜とほとんど同じくらい簡単に買うことができ、値段も同じくらいやすいのです。たとえば、テキサス州では誰でもトラの子供をたった500ドルで買えるうえ、自宅の裏庭でトラを飼うことが法律で認められています。しかし、可愛くてやんちゃな子供が大人になると、それまで夢中になっていたか主は里親探しに血眼になり、「良い方には無料で差し上げます」といった広告を出したりするようになります。 page31
その結果、北米には数千頭もの引き取りてのないトラがいるとか!なんて人間って勝手なんでしょうか。トラに絶滅してほしくはありませんが、ぜったいに絶滅してほしくはありませんが、こんな「数の増やし方」もしてほしくはありません。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
ヒョウ系統
・ライオン/ジャガー/ほか
ベイキャット系統
・ベイキャット/マーブルドキャット/ほか
カラカル系統
・サーバル/カラカル/ほか
オセロット系統
・オセロット/マーゲイ/ほか
オヤマネコ系統
・ユーラシアオオヤマネコ/スペインオオヤマネコ/ほか
ピューマ系統
・チーター/ピューマ/ほか
ベンガルヤマネコ系統
・マヌルネコ/スナドリネコ/ほか
イエネコ系統
・イエネコ/クロアシネコ/ほか
謝辞
参考文献
関連文献
写真・図版協力
索引
『世界の美しい野生ネコ』
- 著:フィオナ・サンクイスト(Fiona Sunquist) メル・サンクイスト(Mel Sunquist)
- 写真:テリー・ホイットテイカー(Terry Whittaker)
- 訳:山上圭子(やまがみ よしこ)
- 監修:今泉忠明(いまいずみ ただあき)
- 出版社:株式会社エクスナレッジ
- 発行:2016年
- NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)
- ISBN:9784767821535
- 271ページ
- カラー