ピリンチ『猫たちの森』
またもやおこった連続殺猫事件。
『猫たちの聖夜』続編。
天才猫フランシスの住居に、突然とんでもないヤツが現れた。冴えない中年男グスタフがなんと“恋人”を連れ込んだのである!
あまりの環境激変に仰天したフランシス、家出しようと町中に飛び出すと、折しもひどい嵐に大雨、濁流に呑み込まれてたどり着いた先は、町の下に広がる下水道の中。いきなり流れてきた首無し死体(勿論人間じゃない、猫の死体である)。フランシスを襲う不気味な群。そこで聞いた信じられない話。森の中の小屋に住むキチガイ科学者(定番ですね)。そして野生の同類達。・・・
特に前半のフランシスはかなりおちゃらけていて、悪のりしすぎている部分もあるが、しかし、ストーリーの全容がわかってくるにつれ、その裏に隠された問題のあまりの大きさ=人間による環境破壊=に愕然とする。フランシスの悪ふざけは、ピリンチが、問題の深刻さに耐えきれずつい軌道を外してふざけしてしまったのかと疑いたくなるほど。実際そうだったのかもしれない。人類の巨大なうねりの前で、個人の力は余りに小さい。
この本は、表面だけを浅く読んでも面白いだろう。冒険あり、笑いあり、息もつかせぬサスペンスの連続である。けらけら笑って、あるいはドキドキハラハラで一気に読める。手に汗握るとはこのこと。フランシス、がんばれえ!と声援を送りたくなる。
が、私のサイトの常連さん達ほどの猫好き動物好きなら、もっと深く読み込み深く考えさせられてしまうに違いない。どうか深く考えて欲しい。そして、自分の出来ることは何かを、もう一度考え直して欲しい。
(2005.11.7)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫たちの森』
- 著:アキフ・ピリンチ(Akif Pirincchi)
- 訳:池田香代子(いけだ かよこ)
- 出版社: 早川書房
- 発行: 1996年
- NDC : 943 ドイツ文学:小説
- ISBN : 9784152080509
- 253ページ
- 原書 : ” Francis : Felidae II ” c1993
- 登場ニャン物 : フランシス、サフラン、ニガー、マッド・フーゴ、アンブロジウス、
アルラウネ(ヨーロッパヤマネコ)、アウレリー(ヨーロッパヤマネコ)、ハチ(カナダオオヤマネコ) - 登場動物 : ―