夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

突然現れた不思議な猫の要求は?。

孤独な高校生と本と猫のファンタジー小説。

あらすじ

夏木林太郎は無口な高校生。幼いころに両親が離婚、母も若くして死に、祖父と暮らしていた。

が、その祖父まで死んでしまった。遺産と云えば、小さな古書店だけ。負債とまではいえない程度の、流行らない古ぼけた店。

ひとり残された林太郎は本好きだったけど、高校生がいきなり古書店を経営するなんて、誰だって無理とわかるだろう。幸い、叔母が彼を引き取ってくれることになった。いつまでもボンヤリはしていられない、早く片付けて、叔母の家に引っ越さないと。

と、そのとき。どこからきたのか、一匹のトラネコが現れて、偉そうに林太郎に頼んだ、いや、命じた。

「ある場所にたくさんの本が閉じ込められている」
(中略)
「閉じ込められた本を助けださねばならぬ。わしに力を貸せ」

page19

猫が人語を自由に操っているのだから、ふつうの猫でないことはわかる。が、閉じ込められた本とは?それらの本を解放するにはどうしたら?

有無を言わせぬ猫についていくと、そこは思いもよらぬ世界だった。本の山また山、本好きな人間たち、けど彼らの思想が極端すぎて・・・

夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

感想

めっちゃ面白かったです!

トラネコのトラさんは人間顔負けの話術で会話をする猫で、正直猫の姿をしているという以外に猫的要素はありません。ネズミを追いかけるでもなし、抱っこされてゴロゴロいうでもなし。

でも、猫と本って、妙に似合う組み合わせだと思いませんか?トラさんの偉そうな口調も、猫ならさもありなんって感じではありますし。

そして、本!本好きな読者であれば、本が積み上がって壁になっている光景を想像するだけで、なんとなくワクワクしちゃいますよね?すくなくとも私は、「店主のこだわりが詰まった昔ながらの古書店」という設定だけでブワっと期待が膨らんでしまいますし、作品中で論じられる読書論というか「本の扱い方」についても、いちいち「ウン、ウン!」と頷いてしまいました。

「本」が好きな人には、ぜひお勧めしたい一冊です。本も猫もファンタジー小説もお好きな方なら、かならず夢中になって読めるでしょう。そしてあらためて、自分の蔵書たちをみまわすことになるのではないでしょうか。

ほんとお勧め!

夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

※※※ 以下、蛇足。ネタバレ注意 ※※※

作品中に、ある「学者」が出てきます。その学者によれば、太宰治『走れメロス』のあらすじは、

「メロスは激怒した」
(中略)
「かの有名な短編もあらすじにしてしまえば、その一文で済む。抽出に抽出を重ねた結果残った最後の一文だ(後略)」

page85

だそうです。

でも、・・・・

私はここで「あれ、ちょっと違う?」(汗)。

つい太宰を引っ張り出し、読んでしまいました、『走れメロス』。わずか十数ページの短編、知り尽くした内容、あっという間に読めちゃいますからね。

んで、やっぱり、私なら違う文を選ぶなあ。たしかに「メロスは激怒した」は超有名な出だしですし、冒頭の一文がその作品全体を見事に表現している名作は多いのですが(夏目漱石『吾輩は猫である』なんかそうですよね?あの長編をたった一文の抜き出しで無理にまとめるとしたら、これ以上のものはないと思うのです)。

私が選んだ一文は「殺される為に走るのだ」。本当は「身代わりの友を救うために走るのだ」と続けていれたいのですが、二文はだめ、どちらを選ばないといけないというのであれば、「身代わりの・・・」は良く内容をあらわしているもののちょっと弱いな、メロスの絶体絶命な状況をあらわすには「殺される・・・」の方かな、と。でももし二文を選んで良いのなら、「殺される為に走るのだ」と「ありがとう、友よ」でしょうか。どう思われます?

しかし、それにしても!いつ読みなおしても、『走れメロス』は傑作ですねえ!やっぱ太宰治はすごいなあ!この1作だけでも永遠に文学史に残るよねえ!あ~、太宰、また全作読みなおしたくなったぁ、あ~、でもまだ1回も読んでいない本が山積みだしぃ・・・おっとっと!これは太宰治のレビューページではありませんでした(大汗)

夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

ショッピングカート

目次(抜粋)

  • 序章 事の始まり
  • 第一章 第一の迷宮「閉じ込める者」
  • 第二章 第二の迷宮「切りきざむ者」
  • 第三章 第三の迷宮「売りさばく者」
  • 第四章 最後の迷宮
  • 終章 事の終わり

著者について

夏川草介(なつかわ そうすけ)

2009年『神様のカルテ』で第十回小学館文庫小説賞を受賞してデビュー。同作は2010年本屋大賞第二位となり、150万部を超えるベストセラーとなる。他に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』がある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『本を守ろうとする猫の話』

  • 著:夏川草介(なつかわ そうすけ)
  • 出版社:株式会社小学館
  • 発行:2017年
  • 初出:序章~第二章「STORY BOX」2017年1月号~2月号 第三章~終章 書下ろし
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784093864633
  • 222ページ
  • 登場ニャン物:トラ
  • 登場動物:
ショッピングカート

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA