杜奏みなや『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。二』
どうしたら佐々木主人に恩返しができる?。
あらすじ
怪界には絶対の掟がある。現界に降りた物の怪は、決して人間にその正体を知られてはならない。もし見られた場合は怪界に戻るのが掟だった。
猫又の斑さんも、うっかり、見られてしまった。王は斑さんに、二週間後に怪界に戻るよう言い渡す。虎太郎という見張り役までつけられてしまった。ほんの子猫だが、この子も観怪(みけ)=物の怪の見張り役=である。こうなったらもう、斑さんも掟には従うしかない。
それにしても心残りなのが、佐々木のご主人だ。心優しい佐々木さんに、是非ともご恩返しをしたい。自分を拾ってくれ、家族にしてくれ、斑さんという名前まで与えてくれた主人。限られた日数内に、理想的な恩返しをするには、どうしたらよいのだろう?
という間にも、佐々木探偵事務所には依頼人が来る。依頼内容は、殺人犯を探す・・・なんて物騒なものではなく、猫を探してほしいだの、思わずプロポーズしてしまうほどすてきな場所を探してほしいだの。
旧鼠のココノ、新たに加わった虎太郎、ときには鎌鼬兄弟や天邪鬼も参加して、探偵業務(?)の手伝いと、それから、どうすれば佐々木主人に恩返しができるかの試行錯誤が始まる。
感想
どこからどこまでも優しい世界です。物の怪たちもやさしいし、花先生も優しいし、なにより、佐々木探偵が優しい!舞台は晩秋で雪も降っていますが、登場人物(物の怪)たちの言動がすべてふわりと暖かいのです。こんな雰囲気を出せる作家も珍しいかも?
私としては、虎太郎ちゃんがもう可愛くて♡ なんせうちにも虎太郎がいるんですからね。うちの虎太郎はキジトラ、小説の虎太郎は茶トラですが、アニメと違って小説本ですから色までは見えない☆うちの虎太郎がちっちゃかった頃を思い出しながら読みました。ちっちゃいながら、虎太郎ちゃん、小説では大活躍です。
ココノさんは相変わらずです。キャンキャン騒ぎながら、いっしょうけんめい探偵と恩返しを手伝ってくれます。猫又の斑さんと旧鼠のココノさんの中の良さも相変わらず。
佐々木さんの過去も明らかになります。彼の心の傷というか、ずっと心底に負っていたもののことも。
そして、気になる恋のゆくえ。佐々木さんと花先生、どうもあやしくない?ってか、花先生の方は見え見えで、佐々木さんのほうもまんざらでなさそうなのに、なぜか前に進もうとしない、・・・じれったいったら!
探偵だの物の怪だのの話ですが、怖いところ、気持ちの悪いところは微塵もありません。それどころか、上記の通り、どこまでも優しい小説。心が疲れている人にはとくにおすすめかも?
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
著者について
杜奏みなや (もりかな みなや)
他の作品に『廻る素敵な隣人。』、『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』など。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。二』
- 著:杜奏みなや(もりかな みなや)
- 出版社:株式会社KADOKAWA メディアワークス文庫
- 発行:2018年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784049121155
- 285ページ
- 登場ニャン物:斑(まだら)さん、虎太郎
- 登場動物:ココノ(旧鼠)