杜奏みなや『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』

杜奏みなや『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』

吾輩は猫又である。

あらすじ

名前はなかった・・・大昔、ふつうの猫であった頃は。猫又と今は立派な名前がある。「斑(まだら)さん」だ。「さん」付けで頼むね。吾輩のご主人、佐々木探偵事務所の佐々木さんが、「斑さん」と名付けてくれたのだから。

そう、大正時代には普通の猫だった。それがなぜか「怪界(けかい)の王」に認められて、物の怪、つまり猫又となったばかりか、「観怪(みけ)」として現界に来ることになった。観怪というのは、いわば物の怪たちの見張り役のようなものである。

猫又とはいえ、現界での姿は普通の猫だし、寒ければ震え、腹も空く。そんな絶望的状態にあったときに佐々木ご主人に拾われて、吾輩は大変な恩を感じている。なんとかして恩返しをしたいと思い、佐々木探偵事務所の仕事を手伝うことにした。

吾輩の相棒はココノという名の白鼠。実はこれも物の怪の「旧鼠」なのだ。ココノも、いつもチーズをくれる佐々木ご主人には恩義を感じている。身バレすることを恐れながらも、手伝ってくれるように。

杜奏みなや『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』

感想

物の怪だの猫又だのが出てきますが、カラっと明るい作品です。物の怪たちはかわいいし、恩返しに必死でいじらしいくらい。佐々木のご主人はノホホンと穏やかで、何をしてもやさしさばかりがほとばしるような男。なぜこんなおおらかな男が探偵なんかしているのかわからないほど。そして、している仕事内容も、あまり探偵らしくなくて。つまり、悩み相談だったり、子供たちに絵本を届けたり、と、ほぼ(完全に?)便利屋業。

そんなですから、猫又の恩返しといっても、例えば暴漢からご主人の命を守るなんて危険なものはありません。むしろ、あまりに爽やかで健康的で、春の日の散歩のような爽やかさ。読んでいるだけでこちらまでホンワリ暖かくなってきます。なんかいいですねえ。こんな妖怪モノもあるんですね。

旧鼠のココノさんのキャラが際立っています。キャンキャンとうるさい跳ねっかえりの子ネズミで、人間に化けるときも身長150センチに満たないセーラー服の美少女で、いつも猫又の斑さんにくってかかっていますが、実はふたりは周囲もうらやむほどの仲良し。斑さんとココノさん、絶妙なコンビです。

一応、妖怪+ミステリーの本ですが、怖いところや、気持ちの悪い部分は毛の先ほどもありません。楽しいだけの本です。おすすめ。

杜奏みなや『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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著者について

杜奏みなや (もりかな みなや)

他の作品に『廻る素敵な隣人。』、『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。二』など。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『佐々木探偵事務所には、猫又の斑さんがいる。』

  • 著:杜奏みなや(もりかな みなや)
  • 出版社:株式会社KADOKAWA メディアワークス文庫
  • 発行:2017年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784048935272
  • 341ページ
  • 登場ニャン物:斑(まだら)さん
  • 登場動物:旧鼠(きゅうそ)、鎌鼬(かまいたち)、妖狐(ようこ)
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