ひずき優『書店男子と猫店主の平穏なる余暇』

ひずき優『書店男子と猫店主の平穏なる余暇』

未消化の『記憶』を解読していくと・・・。

外見はどう見ても猫だが、実態は「獏(ばく)」?そう、あの、夢を食べるという動物。ただし、夢の中に含まれる『記憶』部分だけは消化できない・・・

『書店男子と猫店主の長閑なる午後』の続編。

あらすじ

賢人(けんと)は駆け出しの絵本作家。絵本だけでは食えないので、横浜は元町の裏通りにある「ママレード書店」でバイトしている。オーナーは賢人の高校時代の先輩で、他に収入の良い副業を持っているから、本屋の経営にはてんで無頓着だし、おまけに店員は賢人ひとりだけ。お陰で賢人は、バイトの身でありながら、かなり気楽な身分だ。

そう、書店の仕事は気楽。だけど、そう呑気なことを言っていられない事情もあって。

店主のことである。ママレード書店の店主は「ミカン」。猫の格好をしているが、中身は「獏」なのだ。夜な夜な他人の夢を食べては、面倒なことに、消化できなかった「記憶」を賢人にむかって吐きだす。他人の「記憶」なんてさっさと忘れてしまえば良さそうなものだが、人の良すぎる賢人はなかなかそうもいかない。受け取った「記憶」を気にしては、どうしたら解決してあげられるだろうかと悩む。

ひずき優『書店男子と猫店主の平穏なる余暇』

感想

主な登場人物は若いのです。賢人は24歳、オーナーの馨は高校時代の先輩、馨のいとこ美紅(みく)はまだ大学生。しかし猫店主のミカンは70歳超、建物はレトロで、登場人物の年齢層は小学生から「ひいお爺さん」までと広いのです。どの年齢の方でも楽しめる作品になっているとおもいます。

前作では、顧客の夢(記憶)が多かったのですが、今回はかなり身近な人の「記憶」も出てきます。賢人はますます気になって仕方ありません。なんとか「記憶」をもとの持ち主に返して、そこに見えてしまった誤解やわだかまりを解決してあげないと、賢人自身がぜんぜん落ち着けません。あまりに幼い切ない目線・・・なんとかこの子を救ってあげなきゃ、とか。あまりに純粋で悲劇的だった大昔の恋愛・・・何十年も前のことなのに、いまだに夢に見るようなこの方を放ってはおけない、とか。

猫の、いえ、獏のミカンは「ヌフゥ」とそしらぬ顔ですが・・・

あー、でもひとつ言いたいことが。『カルメン』のドン・ホセ、愛一筋の純真男でまさに悲劇の主人公、みたいに言っていますが、・・・ホセにはミカエラという、こちらは本当に天使みたいなフィアンセがいたんですよ?結婚しようね~と誓い合った舌の根も乾かぬうちに悪女カルメンになびいてフラフラと逸脱、しまいには嫉妬に狂って殺人って・・・ホセってただのダメ男じゃん、と、私は思うんですけど・・・!

と、まあ、そんな事はどーでも良いことで。

読み終わった後、暖かい何かが胸の中に広がるような本です。猫と小説がお好きな人なら、きっと楽しめるでしょう。おすすめ。

ひずき優『書店男子と猫店主の平穏なる余暇』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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目次(抜粋)

うたかたの時

過去、今に還り

手紙

著者について

ひずき優(ひずき ゆう)

「REALxFAKE」で2007年度ロマン大賞を受賞し、受賞作を改題した『キミのいる場所ーREALxFAKEー』にてデビュー。主な作品に『アルカサルの恋物語』シリーズ、『大公様の花嫁さがし』シリーズなどがある。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『書店男子と猫店主の平穏なる余暇』

  • 著:ひずき優(ひずき ゆう)
  • 出版社:株式会社集英社 集英社オレンジ文庫
  • 発行:2016年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784086800570
  • 254ページ
  • 登場ニャン物:ミカン
  • 登場動物:-
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