渋谷寛監修『ねこの法律とお金』

「初の猫専門法律ハンドブック!」が、帯に書かれたキャッチコピー。
今までもペットと法律についての本は何冊も出版されてきました。でも残念ながら、多くが犬中心でした。中には「ペットの」法律相談云々、とタイトルをつけておきながら、全内容が”犬だけ”を対象とした本までありました。
ペットの法律相談で、犬の事例が多いのは、ある意味では仕方ない面もあります。それは良く理解できます。犬は毎日外に出て散歩する必要があり、よく吠え、大型犬となれば成人男性でさえ殺傷する力があります。猫より犬の方が重大なトラブルになりやすいのは事実です。
とはいえ、たとえば「夫婦の法律相談」という本で、全例が夫側からの相談だけなんて本があるでしょうか?そんな本を出版したら、女性たちが激怒すること必須じゃないでしょうか?同様に「ペットの」とタイトルをつけておきながら犬のことしか書いていない法律解説書なんて、「この著者、猫やハムスターや金魚やインコその他は眼中にも無いのね」と、気持ちが冷え切ってしまうのではないでしょうか。少なくとも私はその著者に良い感情は抱けませんでした。
そして、猫の飼育数が犬を越えた今、猫中心の法律書も欲しいというか、出てしかるべきとも思っていました。
だから嬉しかったんです、この本。発売されて、即購入、即読破♪
なのに、なぜ1年もたってからレビューをアップなのかと申しますと、ただサボっていただけでございます(汗)すみません。
内容は、とても好感の持てるものでした。法律関係の書籍は、どうしても難くて冷たい印象を与える本が多いです。法律の事を書いているのですから、ある程度は仕方ないかもしれませんが、そうであっても、著者のお人柄というのはおのずと文面ににじみ出てしまうものです。
この本は、印税のために書かれたのではなく、猫達のために書かれた本だと思いました。
ペット可のマンションだから入居したのに、入居後、ペット不可になるなんてあり?
災害時、猫を連れて避難所に入れる?
犬に猫がかみ殺されたら?
逆に、猫が他所の子どもを引っ掻いてしまったら?
その他。
内容については、下の「目次」をご覧ください。それでだいたい想像がつくと思います。

渋谷寛監修『ねこの法律とお金』
ところで猫は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(略して動物愛護管理法)で守られています。この法律は1999年に成立し、翌2000年から施行されました。その後も「施行後5年を目途として、必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の処置を講ずる」つまり、5年を目安に見直されています。
直近では、2019年(令和元年)6月19日に、「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。この本が出版された後ですので、注意が必要です。
今回の主な改正内容は;
- 動物の所有者等が遵守すべき債務規定を明確化。
- 第一種動物取扱業による適正飼育等の促進等。中でも、出生後56日(8週)を経過しない犬又は猫の販売等を制限する法案は重要と思われます。
- 動物の適正飼養のための規制の強化や、動物虐待に対する罰則の引き上げ。殺傷:懲役5年、罰金500万円(改定前2年+200万円)、虐待・遺棄:懲役1年、罰金100万円(改定前罰金100万円のみ)は大きな改定です。
- 都道府県等の措置等の拡充。
- マイクロチップの装着。犬猫の繁殖業者等にマイクロチップの装着・登録が義務付けられます。
- その他。獣医師による虐待の通報の義務化、など。
面倒なことに、改定法の各条項の施行時期もそれぞれずれていたりしますので、詳細はこまめに検索して確認してください。
法改正されたとはいえ、基本方針はあまり変わっていませんし、動物達の権利は守られる方向に世界は進んでいます(少なくとも私はそう信じたい)。この本を読んで、猫たちにどうしたらよいのかを理解し、細かな法規定はその都度調べるのがよいと思います。

渋谷寛監修『ねこの法律とお金』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ねこの法律とお金』
- 監修:渋谷寛(しぶや ひろし)
- 出版社:株式会社 廣済堂出版
- 発行:2018年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:9784331522073
- 198ページ
目次(抜粋)
はじめに
●第1章 猫のいる日々の暮らしと法律
大切な「家族」の一員でも法律では猫は「物」
幸せに暮らすための猫のニーズを理解しよう
室内でも油断大敵!安全対策は万全に
猫を飼うときに届け出は必要?
ペット禁止賃貸で猫を飼ったらどうなる?
賃貸での猫飼育。転居時に敷金は戻らない?
ほか
●第2章 猫を取り巻くご近所トラブル
愛猫を被害者にも加害者にもさせないために
ご近所トラブルは我慢の限界でこじれていく
猫トラブルを防ぐご近所づきあいのコツ
愛猫が交通事故に。智溶離は請求できる?
犬に咬まれて猫がけが!治療費は請求できる?
愛猫が子どもにけがをさせた。治療費は払う?
ほか
●第3章 ペットサービス・獣医療トラブル
ペットショップでの猫との出会いは冷静に判断
動物病院とのトラブルを防ぐには
信頼関係を築くことが重要
購入した子猫がすぐに死んでしまった!
純血種を購入したのに血統書が届かない
ペットホテルに預けた猫が脱走した
ほか
●第4章 愛猫とのお別れと手続き
元気で長生きしてもらうために飼い主がやるべきこと
看取れることが飼い主の幸せ ペットロスを乗り越える
猫の安楽死は法律で認められている?
猫が死んでしまったら死亡届は必要?
猫の埋葬、法律的な規制はある?
ほか
●第5章 愛猫のための「お金」と制度
愛猫にかかる費用を把握して賢くマネープランを立てる
猫にかかる生涯費用経費はどのくらい?
離婚したら猫の養育費はもらえる?
生活保護を受給しても猫と暮らせる?
ほか
●第6章 ねこ六法―知っておきたい法律
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【1】-動物以後管理法の歴史と目的
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【2】-原則と飼い主の責任
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【3】-罰則と虐待の禁止
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【4】-動物取扱業
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【5】-その他
動物の愛護及び管理に関する法律の概要【6】-計画・基準・改正法など
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の概要ーペットフードの安全性を確保
獣医師法の概要ー獣医師の任務・資格・診療業務
狂犬病予防法/鳥獣保護管理法の概要ー猫のためにも知識として知っておきたい
民法/消費者契約法の概要ー身近な法律と猫との暮らし1
刑法/遺失物法の概要ー身近な法律と猫との暮らし2
これだけはしっておきたい法律・法令用語のキホン
〔資料〕
動物の愛護親帯管理に関する法律
家庭動物等の飼養及び保管に関する基準
住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
参考文献