塩川桐子『差配さん』

面倒見の良い茶トラ雄、その名は「差配さん」。
頃は江戸時代。
今と違って、庶民の生活は貧しかった。
人々は助け合って生きていた。
そしてそれは、猫たちも。
差配(さはい)さんと呼ばれるボス猫。
大きな茶トラの雄。
面倒見が良いことで有名。
困ったことがあれば、差配さんに相談すればよい。きっと助けてくれる。
猫たちにはもちろん、人にも他の動物たちにも一目置かれる存在だった。
差配さんのトレードマークは、両頬に縦に走る傷跡。
いつどこで傷ついたのか.
なにしろ経験豊富な猫であることは確かだ。
このマンガの面白いところは、動物たちがしばしば「人型」で表現されること。
差配さんは、どっしりして、お坊さんのように頭が丸いお爺さん。
銀次はひょろりとした、気弱そうなお兄さん。
小萩はいかにも江戸娘。
お伽羅はおきゃんな女の子。
・・・という具合。

塩川桐子『差配さん』裏表紙
人のように見え、人のように行動しているが、実は猫なのである。人に化けているわけではない。
一緒に描かれている人たち(本当の人間)の目にも、猫としか写っていない。
猫同士も、猫同士としか見ていない。
ただ、その描き方が、人の形をとっているというだけだ。
そして、その画風は、まるで浮世絵を見ているよう。
さらりと細筆で流したようなペン遣い、細い目、おちょぼ口、手の形までもが、浮世絵風。
こういう描き方もあったのかと、なかなか面白い。

塩川桐子『差配さん』
そして、猫たちの描き方。
これがまた良いんだなあ♪
差配さんは、なんとも味のある風貌。
眉間にしわをよせて、目は細く、風格があって、みるからにボス猫だ。
ああ、いるよね、こんな猫!たいてい茶トラで、寛大で、でも本気で怒れば強くて、
なのに人間にはうまく甘えて、美味しいものをもらっちゃう★
いいなあ、差配さん。
こういう猫、大好き♪
(うちのトロみたい?うふふ)
江戸情緒たっぷり、人情(猫情?)たっぷり、とってもお勧めな猫マンガでした。

著者のお人柄がわかる、巻末の「おまけ」。実際、ツバメの巣はすぐ落ちちゃうんです。でもそれを補修して助ける人って少ないんじゃないでしょうか。こういう方が描いたマンガだから『差配さん』じんわりくるんですね。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『差配さん』
- 著:塩川桐子(しおかわ とうこ)
- 出版社:リイド社
- 発行:2017年
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784845851218
- 登場ニャン物:差配(さはい)さん、銀次、小萩、お伽羅(きゃら)、坊、関守房州、他
- 登場動物:スズメ、黒龍、他