浅井登美子『捨て猫を救う街』

浅井登美子『捨て猫を救う街』

副題:わたしは猫おばさん。

かなり頭に来る内容の本だ。

もちろん著者の事ではない。
無理解な登場人物達=猫嫌いたちに対して、である。

私は他人を、動物が嫌いだという、その事ゆえに責める気は毛頭無い。
誰だって好き嫌いはあるし、好き嫌いの感情を持つ権利もあるのだから。

が、何も悪いことをしたわけでもない、ただそこにいるだけの猫を「目障りだ」というそれだけの理由でヒステリックに排除しようとする、その心理は永久に理解できない。

もしあなたが子育て中、あるいは、子供を欲しいと思っているなら、決して「東京都品川区八潮パークタウン」には引っ越さないように。
本の中で著者ははっきり「八潮パークタウン」と名前を出しているので、私も遠慮無く実名を書かせてもらう。

ここにはおそろしい住民達が住んでいる。
「野良猫に餌をやっているとき『殺してやる』と立ちふさがった男」、「ペットを飼っていた者に対する一種の集団リンチ」、「ペットを処分しろ、出て行けと平気でいう冷血でクレージーな人々」、などの表現が続出する。

著者の隣人も冷血を通り越して異常人格だ。
「娘が猫アレルギー」だから猫を処分しろと著者に迫ること、そこまでは私だって理解できる。
でも、その行為は・・・
玄関先に強烈な臭いのクレゾールを撒く。
階段の壁にトリモチを塗りたくる。
すべて著者家族および猫に対する嫌がらせである。
ここまで来ると、まさに狂人である。

のみならず、マタタビで捕獲して無人埋め立て地に捨てようと三十人もの男達が夜中に集合したりする。
あきれたことにその男達は
「三十代、四十代の見るからにサラリーマンタイプの人が多い」
そう、いかにも「良い父親」を演じていそうな、マイホーム主義のお父さん集団だったそうだ。

こんな親が多いから今の日本がこんな世の中になったんだ。
我が子を餓死させたり、兄が妹を切り刻んだり、無抵抗なホームレスの老人を少年達が意味もなく殴り殺したりするんだ(←これは管理人のぼやきです。著者の言葉ではありません)。

この本が出版されたのは2000年12月。

八潮パークタウンは五千五百世帯も入居している大きな団地。
分譲と賃貸だが、ヒステリックに野良猫を排除しようとする輩の多くが「やっと購入したマイホームの資産価値を守りたい一心の自己チュー」だそうだから、ほとんどの猫嫌いがまだ残っているだろう(著者を含め猫好き住民の多くが嫌気がさして転出してしまった)。

だから、もし、あなたの血を分けた大切な子供が将来、殺人鬼となって世間を騒がせるような人間になって欲しくないなら、この団地に引っ越してはならない。
このような住民に囲まれていてはろくな大人に育たないに決まっている。

この本のみならず。

どうして「猫おばさん」「猫おじさん」はこんなに非難されるんだろう。
どうして「殺せ!!」と叫ぶ人たちが威張っていて、小さな命を自腹を切って慈しむ心優しい人たちが、こんなに苦しんだり謝ったり隠れたりしないといけないんだろう。
いつから日本人の心がこんなに狭くなってしまったんだろう。

腹が立って冷静に感想文なんか書けませんね。
なのでここまでにしておきます。

浅井登美子『捨て猫を救う街』

浅井登美子『捨て猫を救う街』

おっと、腹立ちついでに、もひとつ。
日本のお寒い実態を。

*****犬猫禁止は人格権侵害せず・マンション管理組合勝訴*****

東京都江東区のマンション管理組合が規則に反し、犬や猫を飼っている住民3人に飼育禁止を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、管理組合の請求を認めた。

住民側は「ペットは人間生活に極めて重要な存在。危害を与えない動物も一律に禁止するのは人格権を侵害している」と主張したが、清水響裁判官は「飼育禁止を望む居住者が多数であり、ペットを飼うことは共同の利益に反し、人格権の過度の侵害とはいえない」として退けた。

判決によると、管理組合はマンション新築当時から、規則で「居住者に迷惑や危害を及ぼす恐れのある動物」の飼育を禁止してきた。

しかし、ペットを飼育する居住者がいたことから、2002年に2年間の猶予期間内にペットを手放す規則を新たに設けたが、3人は期間終了後も犬と猫を飼い続けた。〔共同〕

*****【NIKKEI NET】2007.1.31.のニュースより全文引用*****

(2007.2.8.)

*八潮パークタウンにお住まいの猫好きで善良な一部住民の方々へ。
不快な表現を使ったことを深くお詫び申し上げます。自分だけが大事、猫や動物はすべて排除せよという人々の反省を促したいと、あえて強い言葉を使わせていただきました。もっと優しい世の中になることを心から祈っております。

浅井登美子『捨て猫を救う街』

浅井登美子『捨て猫を救う街』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『捨て猫を救う街』
わたしは猫おばさん

  • 著:浅井登美子 (あさい とみこ)
  • 出版社:WAVE出版
  • 発行:2000年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:4872900871
  • 238ページ
  • モノクロ
  • 登場ニャン物:多数
  • 登場動物:-

目次(抜粋)

  • プロローグ 猫はなぜ魅力的か
    • 「猫の価金五両」の時代もあった――民俗学にみる猫と人の共存
    • 作家は猫が大好き――作品に登場する猫の魅力
    • その他
  • 第1章 ねこたちと共に暮らす――私の愛した猫たち
    • イノ吉、マンタ、笛子
    • 「なぜ猫なんだ」
    • その他
  • 第2章 「ペットを飼う人出ていって!」――ある団地のペット闘争十年史(1)
    • 1「猫は人間よりも先に住んでいた」
    • 2「ペットを飼う人は出ていってもらおう」
  • 第3章 猫たちを守る闘いが始まった――ある団地のペット闘争十年史(2)
    • 1・動物と共生するってどういうこと?
    • 2・お騒がせなペット嫌いたち
  • 第4章 捨て猫を救う街と人々
    • 1・野良猫の救済活動をする猫おばさん・猫おじさんたち
    • 2・猫のまわりは危険がいっぱい
    • その他
  • 資料/猫救済に役立つINFORMATION
    • 管理組合や町内会が野良猫の捕獲を計画しているのを止めさせるには
    • 犬猫を介して会話がはずむ――福祉施設が注目するコンパニオン・アニマル
    • その他
  • あとがき
  • 参考文献

著者について

浅井登美子 (あさい とみこ)

フリーライター。編集企画会社経営。(株)「映画芸術」編集部、(株)アド・センターのコピーライター等を経てフリーライターに。高齢化問題、地域問題を中心に取材。(財)過疎地域問題調査会発行「でぼら」編集長。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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