バイコフ原作『バイコフの森』
副題:北満州の密林物語。
ニコライ・アポロノヴィッチ・バイコフ。
1872年、ロシアのキエフで生まれる。
15歳の時、有名な探検家ブルジェヴァリスキーに会い、強い影響を受けた。
1902年、鉄道警護隊の将校として旧満州(現在の中国東北部)に赴任。原生林の中で生活する。
第一次大戦後、ふたたび密林に戻ったバイコフは、森林会社の現場監督、狩猟や山歩きの生活をしながら、『偉大なる王』 『牝虎』他、次々と著作を発表する。
いずれも、文明から遠く離れた、深い山中の物語である。
この「バイコフの森」は、バイコフの短編を集めたものだ。動物たちが主だが、人間もたびたび登場する。昔ながらの生活を送る中国人。脱走ロシア兵。それから、「紅胡子フンフーツ」と呼ばれる匪賊たち。
密林には密林の掟がある。非情で絶対的な掟である。誰もそれに逆らうことは出来ない。人も、動物も。
逆らった者に与えられる罰はただひとつ。
死である。
食うか食われるかの密林の世界。人は獣を殺し、虎は人を食う。人同士の撃ち合い。一瞬の油断が命取りとなる。貂を探す狩人の跡を付ける毛皮盗人。殺す者が狙われる。険しい山々。深い雪。さびれた山小屋。逞しく生きる動物たちと、動物たちと変わらない生活の人間たち。
なんという世界だ。
恐ろしく、無慈悲で、圧倒的で、力強く、そして、もろい。
(2008.8.26.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『バイコフの森』
北満州の密林物語
- 原作:ニコライ・バイコフ
- 訳:中田甫(なかだ はじめ)
- 出版社:集英社
- 発行:1995年
- NDC:983 ロシア文学
- ISBN:408781114X
- 350ページ
- 口絵
- 登場ニャン物: -
- 登場動物: トラ、テン、他
目次(抜粋)
- はじめに
- 1.山霊への生け贄*
- 2.射撃の名人
- 3.死の幻影
- 4.虎の夜
- 5.朝鮮人参堀り
- 6.人食い虎*
- 7.謎の記号
- 8.紅胡子(匪賊)との遭遇
- 9.深い森の言い伝え
- 10.奇妙な猟師*
- 11.脱獄者
- 12.森の精*
- 13.脅し
- 14.危機一髪
- 15.死地をさまよう
- 16.夜の椿事*
- 17.虎の洞窟*
- 18.密林の掟
- 19.二人の狩人
- 20.董力という男
- 21.老紅胡子の仕返し
- 22.大きな賭け*
- 23.偉大なる王の死*
- 24.蛇爺さん
- 25.森の悲劇
- 26.小猿の謎
- 27.密江盆地
- 注解
- 絶筆ー回想(一九四五~五六年)
- バイコフを偲ぶ
- バイコフの歩んだ道と著作
- 【注】*印は、ネコ科(主に虎)が出てくる作品です。