バイコフ『偉大なる王』

バイコフ『偉大なる王』

 

満州の密林に、トラが吼える。

バイコフは、ロシア帝政時代の極東国境警備隊の将校だったが、ロシア革命後、満州に亡命し、さらにオーストラリアに移住した。その満州時代に動物や自然の研究をし、多くの動物小説を残した。
「偉大なる王」は彼の代表作。

王(ワン)はトラである。人間を含めた動物界の頂点に立つ。

子トラ時代、初めての恋、クマや老イノシシとの死闘、密林で暮らす人間達との関わり合い・・・。

実際に密林で暮らしたことのある人間でなければ絶対に書けないような、満州の密林の描写がすばらしい。
どの動物たちも、そして人間も、大自然の掟に従いながら、力一杯生きている。

トン・リ(ツン・リ)という老人が出てくる。
この老人の生き方こそ、ある意味で理想的なのではないか。

決して抗わず、決して臆することなく、天の法則に従って、悠然と生きている。
大悟の人物だ。

さしもの王でさえ、この老人にはつい道を譲ってしまう。

バイコフの作品はあまり数多くは読んでいないけれど(もっと翻訳・出版してください)、彼が描いたもっとも魅力的な人物だと思う。

(2002.6.22)

バイコフ『偉大なる王』

バイコフ『偉大なる王』裏表紙

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『偉大なる王』

  • 著:ニコライ・A・バイコフ/li>
  • 訳:今村龍夫(いまむら たつお)
  • 出版社:中央公論社 中公文庫
  • 発行:1989年
  • NDC:983 ロシア文学
  • ISBN:4122016223
  • 306ページ
  • 原書:
  • 登場ニャン物:王(ワン=シベリアトラ)
  • 登場動物:クマ、イノシシ、シカ、他多数

 

 

著者について

ニコライ・A・バイコフ Nicolai A. Baikov

(1872-1946?)。ロシア帝政時代のキエフで生まれる。極東の国境警備隊の将校として勤務していたころ、ペテルブルグ学士院の命で、満州の自然・動物などの調査に従事。ロシア革命後、満州に亡命する。満州地方研究協会の名誉会員になるとともに、活発な著作活動をはじめ、自身の目でたしかめt自然、野生動物の生態をもとにした異色の動物小説を執筆した。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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バイコフ『偉大なる王』

9.3

動物度

9.5/10

面白さ

9.0/10

猫好きさんへお勧め度

9.5/10

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