『しっぽの声』第2巻 作画:ちくやまきよし、原作:夏緑、協力:杉本彩
「経費!?損失!?命だぞ!!」
第2巻では、悪徳ブリーダー(=パピーミル)の実態や、ペットショップの裏側が暴露されます。
天草士狼(あまくさ しろう)と獅子神太一(ししがみ たいち)は、ある高層マンションに忍び込もうとしていました。いかにも怪しげなブリーダーの話を聞いたからです。飼育環境の見学は禁止、住所非公開、SNSのアカウントも開いてはじきに削除。扱っているのは、極小チワワや折れ耳のスコティッシュフォールド。
なんとか住所は突き止めましたが、さすがの彼らも無作戦に他人のマンションに踏み込むわけにはいきません。そこで天草がとんでもない作戦を開始。なにしろ、この天草、動物を救うためなら何でもする男、強引な動物救助で過去に何度か警察の御厄介になったことさえある猛者です。そこらのボンボンとは覚悟が違うんです。
「そのときは笑って警察の取調室でカツ丼食うさ。
折れはブタ箱に入っても死なねえが、
パピーミルなら多くの動物が死にそうな目にあってるんだ」
「いかれてる・・・
まったく・・・
・・・
おい、待てよ!ボクも行く!」
page52
と、そんな天草の行動力に、ボンボン獣医もあっさり感化されて、二人は潜入作戦を開始します。
かたや。
動物が好きでペットショップでアルバイトをはじめた女子高校生。子猫を抱いて笑顔になる人々に自分も笑顔になり、これこそ幸せを売る仕事だと、おおいに夢を抱いてやる気まんまんだったのですが。
ある日、偶然、バックヤードの大型フリーザーの中を見てしまいます。中で冷凍保存されていたのは・・・少しでもペット業界のことを聞いたことのある人ならわかりますよね。そう、かつては生きていた”商品”たち・・・
作品では、悪徳ブリーダーやペットショップオーナーたちの本音が語られています。
「生き物はナマモノだ。
勝手に増えるのはありがたいが、15年も生きるのに可愛さの消費期限はせいぜい3ヶ月だからな・・・」
「とりあえず金にかえられる子猫と子犬をどんどん売って、補填するしかねえ・・・!!」
(中略)
page95
この繁殖屋は、動物飼育に関してはド素人。同じような他のブリーダーに騙されて気楽に始めてしまったが、期待通りには売れずあっというまに多頭飼育崩壊状態に。
ペットショップも同様です。オーナーは笑顔でニコニコと言い放ちます。不良在庫の犬猫は冷凍庫に入れて凍死させることこそ
「麻酔を使えない一般人ができうる、一番人道的な処分方法ですから。」
page159
具合の悪い動物を病院につれていかないのは、
「治療のかいなく死んでしまったら、治療費全部無駄だし・・・
死ななくても、治療費と隔離入院で何万円かかる?」
「完治までに8週齢の子は10週齢に育ってしまうから、売れなくなる。
最終的に赤字覚悟の値引きになる子に、さらに経費は掛けられないでしょ?
損益を考えて、処分したほうが損失が少ないときだけ処分しているんですよ。」
「経費!?損失!?命だぞ!!」
page159-160
ここでいう「処分」とはもちろん、殺すことです・・・
ペットショップで店頭販売されている愛らしい子犬・子猫たちの裏には、こんな悲しい現実があるのです。
この悪循環を断ち切るには、ペットショップではなく、保護団体等で里親募集されている子たちの中から選ぶという行為が第一歩となります。
どうか、里親募集の子たちを、よろしくお願いします。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『しっぽの声』
第2巻
- 作画:ちくやまきよし
- 原作:夏緑(なつ みどり)
- 協力:杉本彩(すぎもと あや)
- 出版社:株式会社 小学館
- 発行:2018年
- 初出:「ビッグコミックオリジナル」2017年第19号~2018年第2号
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784091898982
- 196ページ
- 登場ニャン物:多数
- 登場動物:犬、ほか
目次(抜粋)
- 第8話 ペットショップ
- 第9話 うばわれた声
- 第10話 つくられた命
- 第11話 バベルの叫び声
- 第12話 無慈悲なババ抜き
- 第13話 繰り返す連鎖
- 第14話 バックヤード
- 第15話 わかれ道