『しっぽの声』第4巻 作画:ちくやまきよし、原作:夏緑、協力:杉本彩
「校庭の片隅に地獄ができていたのに、大人が誰も気づいてやれなかったのかよ・・・」
第4巻では、ペットの「引き取り屋」や、学校での動物飼育問題、里親詐欺、さらに、憎むべき快楽動物虐待者などが取り上げられています。
まずは、引き取り屋。引き取り屋とはなにか?
かつては、売れ残ったり、繁殖に使えなくなったりした犬や猫は気楽に保健所に持ち込まれていました。が、動物愛護法が整備されると、保健所はペット業者の動物を引き取らなくなりましたし、動物を殺したり遺棄すれば逮捕されるようになりました。かとて、動物という生きた商品を「廃棄」するたびに動物病院で安楽死させていたのでは、お金がかかってたまらないし、断られることも多い。
「そこで、引き取り屋って商売があらわれたおさ。
金をもらって動物を引き取り、生かさず殺さず放置するだけのサービスだ。」
「なんてむごいんだ!
水もエサもろくに与えず、死へ向かうためだけの施設・・・
まるで強制収容所じゃないか・・・!!」
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動物達は積み重ねられた狭いケージに閉じ込められ、かろうじてエサだけは放り込まれますが、もちろんお散歩など連れて行ってもらえないし、怪我をしても病気になってもそのまま。ひたすら死ぬのを待つだけです。裏庭には死体の山。
引き取り屋のオヤジは、天草たちに言い放ちます。
(オヤジ)「私が引き取り屋をやめたって何も変わりませんよ。
安易にペットを求める人間がいるから、繁殖工場はペットを増やす。
引き取り屋に金を払う人間がいるから、新しい引き取り屋がどんどん現れる。
あんたたちのやってることは、きりのないイタチごっこですよ。」
(天草)「そんなイタチごっこ、いつか終わらせてやるさ!」
(中略)
(オヤジ)「誰だって嫌な話には耳をふさぐ。
清技研や両親なんてチンケなもんじゃ、人間の良くはかえられねえ。
(中略)おまえは無力なんだよ。」
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かたや、こちらは小学校。かわいいウサギたちを、いきものがかりの子供がお世話していました。
が。ここにも問題が。
小学生にまかせっきりのウサギたちに異変が起きていたのです。そして、動物に無知な教員たちは、それを見ても誰も気づかず・・。
そして、里親詐欺。
実態はパピーミルなのに、可哀想な猫を保護したとSNSで宣伝してお金を集めたり、良い里親を装って猫を貰い受け、虐待動画を拡散したり。
心に闇を持った、悪魔以上に悪魔的な人間たち。犠牲になるのはいつだって、人を信じてしまった犬や猫、そして、善意の人たち・・・
「どうすれば・・・!?
どうすれば「本当の殺処分ゼロ」になるんですか?」
「そりゃあ・・・
分母をゼロにしないかぎり、ゼロにゃならねえよ。」
「分母って・・・?」
「だれひとり動物を捨てず、保護施設に収容される動物がゼロになるということです。
分母ゼロというのは、数学的には存在しない数ですが・・・」
「いいえ!!
いつか実現してみせます!
その、ありえない「分母ゼロ」を!!」
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ボロボロ涙を流しながら絶叫する学生ボランティア・・・
ああ、私もそんな日を、こころから、こころから、こころから、夢見ています・・・!!!
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『しっぽの声』
第4巻
- 作画:ちくやまきよし
- 原作:夏緑(なつ みどり)
- 協力:杉本彩(すぎもと あや)
- 出版社:株式会社 小学館
- 発行:2019年
- 初出:「ビッグコミックオリジナル」2018年第12が央~第17号、第19号、第20号
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784098602520
- 196ページ
- 登場ニャン物:多数
- 登場動物:犬、ほか
目次(抜粋)
- 第24話 引き取り屋
- 第25話 安楽死
- 第26話 いきものがかり
- 第27話 保護猫詐欺(上)
- 第28話 保護猫詐欺(下)
- 第29話 殺処分ゼロの「例外」
- 第30話 里親詐欺(上)
- 第31話 里親詐欺(下)