『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし、原作:夏緑、協力:杉本彩

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

 

「動物を守れるのは優しさではない。覚悟なのだ。」

宇佐美々香(うさみみか)は女子高校生。動物が大好き。かわいい動物たちと触れあえるという単純な動機だけでペットショップでアルバイトを始めたが、ペット業界の裏側を知るたびに傷つき打ちのめされる。彼女のウブな心を救ってくれたのは、「王子様」と憧れる相手、天原士狼。天原は、アニマルシェルターを運営し、動物の為のなら何でもする男である。

美々香は、夜間も店頭展示される動物達に心を痛める。子犬と子猫は、・・・そう、犬と猫だけに限っては、動物愛護管理法で、夜8時から翌朝8時までは生体展示は禁止されました。でも大手ペットショップには犬猫以外の「生きている子たち」もいます。ウサギ、モルモット、ハムスター、インコ、その他。美々香のペットショップにはコモンマーモセットまでいた。夜遅くまで、まだ赤ちゃんのその子も展示され続けていた。コモンマーモセットは「人間と同じ真猿類、昼行性で、夜に長い睡眠をとる動物なのに。(page31)」

美々香は、さっそく、本部の人間に相談する。が、相手にもしてくれない。ペットショップで何なんだろう・・・またまた悩む美々香。

一方。

天原は、「へるぷわん」のボランティアと一緒に、ある家を訪ねていた。「ナイチンゲール・ティアハイム」所長、内藤小夜子は、野良猫保護のレジェンド、現代のナイチンゲールと呼ばれ、動物ボランティアの間では有名な人物だった。どんな猫でも引き取ってくれる。虐待され獣医も見放した(とされた)猫を寝ずの看病で救い、里親募集できるほど回復させる。小学校で動物愛護の講演をする。まさに、女神のような存在・・・の、はずなんだけど・・・

「内藤邸」の広い家から、アンモニア臭が漂っていた。多頭飼育崩壊を示唆する臭いだ。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

*   *   *   *   *

2020年6月、動物ボランティア界に激震が走りました。老犬・病犬など、どんな悪条件の犬でも引き取ってくれることから「神様」と呼ばれていた京都府の女性宅が、多頭飼育崩壊状態だったことが発覚したのです。一般人はもちろん、複数のボランティア団体等が、彼女に救助した犬猫を託していました。戸建ての一軒家とはいえ、密集した住宅街にある女性の自宅はそう広くもなく、彼女以外にお世話している人がいる様子もなかったのに、彼女は際限なく引き受けていたようです。死体の山が積みあがるのも当然でした。2020年12月、彼女は略式起訴されましたが、罰金刑が処せられただけでした。不衛生極まる狭いケージ等に閉じ込められたまま、餓死していった数百(?)の魂に対して、あまりにも、あまりにも、残酷なまでに軽すぎる刑でした。

私なら、つきっきりの看病が必要な状態の子は、犬なら1~2頭、猫でも2~3頭が限度です。片手の本数を越える犬猫の同時介護は無理です。生活もしていかないといけませんし、たとえ寄付金等で金銭的な問題は解決できたとしても、時間や体力は無限ではありません。

動物を安易につぎつぎと「保護」する人がいたら、本当に要注意なんです。いつかは必ず崩壊しますから。

「第59~61話 闇夜のナイチンゲール」は、おそらく、上記の事件をモデルに書かれた話じゃないかと思うのですが、マンガでは悪質性が薄められています。まずは、保護対象が猫だけとされていること。犬と猫では手間もコストもずいぶん違いますよね。それから、家の大きさ。マンガでは庭も地下室もある邸宅のような家になっていますけれど、事件の女性宅はそんな豪邸じゃなかったような(ニュース画像等で見ただけで私自身訪問したわけじゃないから詳細はわかりませんけれど)。

「第8巻」ではほかにも、動物たちと正しく付き合う知識が豊富に語られています。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

「ペットは野生動物じゃない。イエイヌもイエネコも、人間に飼われて、人間社会のルールの中でしか生きられない。だから、子供同然ってことなんだ。」
第56話

そう、我が子同然。しかし。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

「猫はわが子じゃねえ。
その動物それぞれの自然の特性を理解しようともせず、なんとなく耳障りの言いアロマやらハーブやら与えて人間あつかいするってのは、おままごとと同じだ。
生き物はおもちゃじゃないんだぜ!?」
第60話

ヒトと、イヌやネコその他のペットたちは、異なった生物種。必要とする栄養素も、幸せを感じる基準も、なにもかも違う存在。そのことを決して忘れてはいけません。

女子高校生の美々香の言葉。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

「ペットを苦しめるのは人間だけど、ペットを救うことも人間い鹿できないことを、私は忘れてた。
人間である私があきらめずにかえていかなくちゃいけなかったのに、
他人事みたいに絶望なんかしてられない!
(中略)
だからこそ、何があってももう絶望はしない。」
第58話

天原も吼えます。無理とわかっていても吼えます。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

「動物愛護や自然保護を教えるんならわかる。子供もペットを買ったり、野生動物とかかわり機会があるからな。
だけど外来種問題や保護動物問題は、大人がバラまいた種だ。
今の俺達の代が、大人の責任で片づけなきゃならねえ問題だ。
それに子供を巻き込む目的は何だ?
優柔不断にのらくら逃げて、あとの世代にケツをふかせるつもりマンマンじゃねえか!」
第63話

スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが、2019年国連で各国のお偉方を前に「How dare you!(大人たち、なんてことをしてくれたの!」とスピーチしたことを思い出しますね。

そして。

私がもっとも深く頷いたセリフ。獅子神太一が留学したフロリダ大学はワシントン教授の言葉です。

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

「動物を守れるのは優しさではない、
覚悟なのだ。」
第62話

「きゃーん、きゃわいい~」「いやーん、癒されるぅ~」では動物は守れないのです。腹の底からの「覚悟」がなければ、動物達は守れないのです。

覚悟がない人は、動物とかかわってはいけません。飼ってはいけません。

まとめ:ちくやまきよし画『しっぽの声』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『しっぽの声』
第8巻

  • 作画:ちくやまきよし
  • 原作:夏緑(なつ みどり)
  • 協力:杉本彩(すぎもと あや)
  • 出版社:株式会社 小学館
  • 発行:2020年
  • 初出:「ビッグコミックオリジナル」2019年第23号~202020年第1号、第3号~第7号
  • NDC:726(マンガ、絵本)
  • ISBN:9784098607990
  • 196ページ
  • 登場ニャン物:多数
  • 登場動物:犬、ほか

 

目次(抜粋)

  • 第56話 夜のペットショップ(上)
  • 第57話 夜のペットショップ(下)
  • 第58話 美々香の悪夢
  • 第59話 闇夜のナイチンゲール(上)
  • 第60話 闇夜のナイチンゲール(中)
  • 第61話 闇夜のナイチンゲール(下)
  • 第62話 交雑種(上)
  • 第63話 交雑種(下)


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『しっぽの声』第8巻 作画:ちくやまきよし

9

動物度

9.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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