藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

 

良く知れば、寄生虫なんてへっちゃらに♪。

私は藤田紘一郎先生の大ファンである。だから先生の一般向け著作は多分全部読んでいる。お陰様で、回虫だの条虫だのにもすっかり詳しくなってしまった。

保護した猫は必ず検便(寄生虫検査)をする。何が見つかっても驚かないし、気味悪いと思ったこともない。虫なんて駆虫すればよいだけこと。変な病気の方がよっぽど怖い。

うちのどら猫おつうの肛門からマンソン裂頭条虫が出てきたことがある。これがウワサの奴かと、ティッシュでそっとつまんで、ちぎれないようにゆっくりゆっくり引きのばした。そして新聞紙の上に丁寧に広げて長さを測ろうとしたところで同居人が来て悲鳴を上げた。先生の本を読んでいない同居人にとっては、‘サナダ虫’などもってのほか、夜眠れなくなるくらいに気持ちの悪い存在だったらしい。捨てろ捨てろとうるさいので、厳重にビニール袋で包んで外のゴミペールに入れたが、すばやく測るのは忘れなかった。約62㎝であった。
当時のおつうは2キロもない痩せネコだったから、62㎝でもかなり大きい。マンソン成虫は最長1メートルくらいにはなるらしい。

人畜共通感染症とは、ヒトもヒト以外の動物も共通して感染する病気や寄生虫の事である。動物由来感染症とも言われる。

週刊誌などでは、この動物由来感染症という名称の方がもっぱら使われる。それは多分「動物からはこんな怖い病気がうつるんだぞ」と、無知な大衆をあおりたいからだろう。が、ヒトも動物である以上、私にはこの動物由来という言い方は変に思われる。動物由来なら、ヒトからヒトにうつる病気も全て対象となるはずだ。私は、人も家畜も共通して感染すると書く人畜共通感染症という言い方の方が好きだ。

さて、この本は、以下の各章から構成されている。

1.ペットからの感染が心配
2.イヌからうつる病気
3.ネコからうつる病気
4.トリからうつる病気
5.カメ・ネズミ・アライグマ ペット感染症はこんなにある
6.海外旅行でかかるペット感染症
7.ペットによるアレルギー
8.人にはうつらないけど怖い病気
9.ペットからの贈りもの

やれ病気だの寄生虫だのというと、さぞ怖くて気味が悪い本だと思われるかもしれないが、ぜんぜんそんな事はない。藤田先生は寄生虫大好き、寄生虫のことを世にも美しいと本気で思っておられるお人。

そんな人だから、当然ながら寄生虫だけでなく、生物すべてに深い愛情を持っておられる。ご自身もシーズー犬コロちゃんを猫っかわいがりしているし、お腹の中にはサナダ虫のキヨミちゃんを‘飼ったり’している。

犬猫から病気が感染するとはいっても、だから怖いから犬猫を避けろなんて絶対に仰らない。むしろ、感染すると言ってもこの程度、こういうことさえ気をつければ大丈夫、知識を持っておきましょう、というお考えだ。

猫に限らず、動物と一緒に暮らす人は、この本を必ず読むべきだと思う。ペットがいなくても、子供をもつお母さんは、この本を読むべきである。文章はユーモアたっぷりで、明解で読みやすく、しかもすべて医者としての実体験に基づいているから、大変に説得力がある。医学書ではなく、おもしろおかしいエッセイの感覚で読める。

まだ未読のかたは、だまされたと思って読んでみてください。きっと先生のファンになります。

(2003.4.5.)

藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

藤田紘一郎『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『イヌからネコから伝染(うつ)るんです』

  • 著:藤田紘一郎(ふじた こういちろう)
  • 出版社:講談社
  • 発行:2000年
  • NDC:490(医学)
  • ISBN:4062104792 9784062104791
  • 263ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:寄生虫たち

 


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