藤田紘一郎『パラサイトの教え』

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藤田紘一郎『パラサイトの教え』

 

『寄生虫博士のプーラン・プーラン』2001年発行改題。

日本人は、死んでも腐らないそうだ。
アメリカ人、インドネシア人などの死体に比べて、日本人の死体はなかなか腐らないという。
なぜか。

日本の水道水には、塩素が大量に入っている。
水をそのまま飲む場合はミネラルウォーターを飲む人でも、煮炊きや洗い物全てをミネラルウォーターって家庭は少ないだろうし、ましてシャワーやお風呂は水道水だろう。

日本のスーパーに並んでいる野菜はどれもきれいだ。
虫食い野菜など見あたらない。
もちろん、腐った野菜や果物も置いていない。
自然に育てれば野菜には当然虫が付き、自然に放置すれば果物はどんどん腐るはずだが、そんな商品は日本では売れないから、どれも人為的に操作されている。

その結果、日本人は、『虫も食べない野菜』を食べ、『腐らないりんご』を食べ、さらに、農薬や除草剤の流れ込んだ川や海の魚を食べ、病気にならないよう薬漬けにされた家畜の肉を食べ、毎日洗剤で体をゴシゴシ洗ってあらゆる菌を落とし、身の回りのものはすべて抗菌仕様、ついには死んでもなかなか腐らない体になってしまったという。

生物として異常だ。

便器で有名なTOTOさんが僕のところに来ました。便器を抗菌仕様にするとおしりがかぶれます。だから、うちの便器は「抗菌度を落として」きました。ですから、今は抗菌仕様といっても、菌にはほとんど影響を与えていません。それでこれからは「TOTOの便器は抗菌剤で処理していない」ことをユーザーに説明します、というのです。僕はこれは本当によいことだからすぐ実行して下さい、と頼みました。ところが、TOTOさんの同業会社のINAXさんが「うちの便器は抗菌剤使用です」と宣伝したら、売り上げが逆転してしまいました。
(p.39~)

ウォシュレットばかりを使っている人は、紙で拭いただけではお尻が痛くなると言う。
私はそんなのは単なる気のせい、精神的なものかと思っていたが、そうではないそうだ。

しかし、一日に何度もおしりをウォッシュレットで洗っていると、おしりの皮膚を守っている皮膚常在菌が流されて、おしりの皮膚が中性になってしまう。そうすると、ウンコの中のちょっとしたバイ菌にやられて、おしりが痛くなるのだ。皮膚常在菌がいるおかげで、皮膚の脂肪を脂肪酸に変化させ、皮膚を酸性に保つことができる。だから、悪いバイ菌がきてもはねのけてしまうというわけだ。
(p.82)

私は実はウォッシュレットは、ほとんど使ったことがない。
田舎家の我がトイレは汲み取り式であるにもかかわらず、便器にはなぜかウォッシュレットが備え付けられているが、引っ越し当初から壊れていたから一度も使えなかった。
まして外出先では使わない。
というのも、私にはどうも、ウォッシュレットの方が紙より不潔に思えてならず、気持ち悪くて使えないのだ。
だって、ウォッシュレットのノズルって、便器の中からニョッと出てきますよね。
いくら普段は格納されているとはいえ、誰の何がかかっているかわからないノズルが、適度な湿度の中に長年置かれているわけでして。
まして暖房機能付き便座やトイレ室なら、温度も快適。
雑菌の巣窟のような気がしてならない。

それに引き替え、紙なら、・・・自分の体から出た直後のものを乾いた紙で拭き続けて何十年、今まで何も問題はおこらなかったという確固たる実績がある。
なので、尾籠な話で恐縮だが、私はウォッシュレットはあまり使わない。

藤田先生の本を読んで、めったに使わなくて正解だなと思ったのである。

「寄生虫博士」として有名な、藤田紘一郎先生の本だけど、この本には寄生虫の話はほとんど出てこない。
インドネシアなどでの生活を述べながら、現代日本人の異常さを指摘している。
異常な清潔志向。行きすぎた除菌・抗菌。
その結果としての日本人の、アトピーや喘息、肉体的異常、さらに精神的不安定さや異常行為。

特に若い親たちに読んで欲しい本です。

(2010.5.19.)

藤田紘一郎『パラサイトの教え』

藤田紘一郎『パラサイトの教え』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『パラサイトの教え』
『寄生虫博士のプーラン・プーラン』2001年発行改題

  • 著:藤田紘一郎(ふじた こういちろう)
  • 出版社:新潮社 新潮文庫
  • 発行:2004年
  • NDC:302(社会・文化事情)
  • ISBN:9784101368313
  • 280ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:寄生虫たち

 

目次(抜粋)

はじめに

第1章 JALの機内で―ヘンになった日本人
四度目の正直?/どこかおかしいニッポン人/「超清潔症候群」という病/他

第2章 タンジュン村から―貧しくて豊かな人々
においを排除しない国/香りと臭いの文化/ウンコの混じったお茶の味/他

第3章 インドネシアを旅して―プーラン・プーランという生き方
村社会の相互監視システムが必要だ/インドネシアの飛行機もアブナイ/何事も「紙の導き」なのか

第4章 ヒトもヒトらしく、イヌもイヌらしく
イヌとイスラム教とヒンズー教/イヌに殺られても、イヌが大事なネパール人/「黒いチーズ」の正体/他

第5章 「アジアの笑顔」を忘れた日本の子どもたち
ボラカイ島の美しい女性、クリスティー/ヒトもブタもイヌもニワトリも同じものを食べる/どこかヘンだよ、日本の子どもたち/他

第6章 熱帯雨林とウンコと人間と
文明化した人類の八つの滞在/江戸時代に見る見事な循環型社会/店子たちの尻で金持ちになった大家さん/他

おわりに
文庫版あとがき
腹の虫がいた頃 奥本大三郎

 

著者について

藤田紘一郎(ふじた こういちろう)

中国・旧満州生れ。東京医科歯科大学医学部卒、東京大学医学系大学院修了。金沢医科大学教授、長崎大学教授を経て、’87年、東京医科歯科大学医学部教授。現在は同大学院教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『原始人健康学』(新潮社)、『笑うカイチュウ』『ウッふん』(講談社)、『ニッポン「亜熱帯」化宣言』(中央公論新社)、『日本人の清潔がアブナイ!』(小学館)など著書多数。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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