江原昭三:編『ダニのはなしI・II』

ダニって、人間に有益な品種のほうが圧倒的に多い。
ダニについての論文を集めた本。
世間におけるダニの評判はどうも芳しくない。
忌み嫌われている、といってよい存在だ。
が、たかがダニ、と馬鹿にする事無かれ。
ダニは人間の生活に密着した生物、それ以上に、自然界には無くてはならぬ、地球の重要な住民のひとつだ。
ダニはクモに近いである。
体は小さく、最大のダニ(オルニソドロス・アキヌス)でさえ、吸血後でやっと3cm。
大多数は成虫でも0.10~0.75mmの大きさしかなく、虫眼鏡で見なければ見つけることも出来ない。
現在、地球上には4万種を超えるダニが知られているが、「著しく小さい動物であるために、まだまだ未発見や実研究のダニがきわめて多いのが現状」であり、「実在しながらまだ学界に登録されていないダニを含めると、五〇万種ぐらいがいるのではないかと思われ(p.6)」るそうだ。
すごい数だ。
ちなみに、日本国内で報告されたダニは現在約1700種。
そして、人間にとって有害なダニは、ダニ全体からみれば少数派。
多くのダニは、土中で植物質の分解に関与するなど、地球全体にとっても、また人間にとっても、むしろ有益な動物である。
猫と暮らす上で気になるダニといえば、皮膚疾患(疥癬)の原因となるヒゼンダニ、外猫によく見られるミミヒゼンダニ、それから、自然ゆたかな外猫にしばしば見られるマダニだろう。
疥癬はいかにも痒そうで猫も可愛そうだし、人間にもうつるから気をつけなければならない。
皮膚疾患をおこすダニは何種類もいて、人間のニキビもニキビダニが原因であることはすでに広く知られた事実だ。
マダニは大きく、肉眼でもよく見え、食いついたら顎がとれても離れず、しかも伝染病を運ぶという、やっかいな存在である。
私が住んでいる地域ではヤマトマダニが良く見られる。
満腹に給血するとアズキ大にもなり、風船のように膨らんだ体は、破裂しないのか不思議が半分、転がして面白いが半分(笑)。
この本に収録された章はどれも、それぞれ独立した論文として読めるので、好きな章だけを好きな順番で読んでもよいと思う。
もちろん、最初から最後まで通読するのも面白い。
私は通読したが、ダニに対する気持ちがかなり変わった気がする。
ダニだって必死に生きて、多くのダニは地球に貢献しているんだ・・・だからといって、今更ダニ大好き、には、なれないけれど。
(2009.8.5.)

江原昭三:編『ダニのはなしI・II』

イラストがメインなので、虫などが苦手な人でもそれほど気持ち悪くはないと思います。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ダニのはなしI・II』
- 編:江原昭三(ひらがな、spell)
- 出版社:技報堂出版
- 発行:1990年
- NDC:485.7(動物学)
- ISBN:(I)4765543668 9784765543668; (II)4765543676、9784765543675
- I=228ページ、II=222ページ
- 登場動物: ササラダニ、ヒゼンダニ、コナダニ、マダニ、ハダニ、ツツガムシ、その他のダニたち
目次(抜粋)
【I巻目次】
1 ダニとはどんな生きものか
2 多様なダニたちの生活
3 土とダニ
4 ササラダニの生活史
5 ササラダニの一種クワガタダニの生態
6 スギの落葉はダニのゆりかご
(中略)
16 ダニが原因となる皮膚疾患
17 ヒゼンダニと疥癬
18 住まいのダニを防ぐには
(中略)
28 ペット・飼い主・ダニ
29 恒温動物寄生ダニと宿主の進化
30 体の中にもダニがいる
【II巻目次】
1 ダニの性と生殖
2 ダニと伝染病
3 マダニの生きざまの二種類ー積極的と消極的ー
4 マダニに刺される話
5 マダニの体の中のからくり
6 マダニの卵形成とその調節のしくみ
7 交尾なしでも殖えられるフタトゲチマダニ
8 トカゲに寄生する特殊なマダニ
9 カメに寄生するカメキララマダニ
(中略)
28 植物のダニとウイルス
29 古文献に現れただに
30 ダニの民族

吸血前のマダニ。多分ヤマトマダニ。

吸血後のマダニ。上と同種ですが、ここまで膨らみます。