服部幸監修『ネコの看取りガイド』

副題：ネコのきもちがマルわかり。

はじめて猫の病気や老いに向き合うことになった、初心者飼い主さんにおすすめの本。

昔に比べて飼い猫の寿命が延びたとはいえ、猫はやはり人より先に死んでいきます。猫の最期の瞬間まで、しっかりとお世話し愛情をかけ続けること、これこそが飼い主の最大の義務だと云って良いでしょう。けれども、動物に限らず「死」全般から遠ざかった生活を送っている現代日本人にとって、愛猫の看取りは大きな試練となります。何をどうしたらよいのかわからない人も多いかと思います。

そういう方は、この本を手に取ってみてください。

愛猫が死に至るまでの間、少しでも充実した日々を過ごしてもらいたい、肉体的・精神的苦痛をできるだけ和らげたい。悔いのないよう、出来る限りのことをしたいと、どの飼い主も願っているのではないでしょうか。
この本は、最期の３か月を迎えた愛猫に何をしてあげたらよいのか、そして「看取り」に関することを解説しています。終末期における、食事、排泄、運動など、日常のお世話から、病気の事、そして臨終前後のことなどについてです。
「はじめに」より

たった120ページほどの薄い本ですし、絵が多く文章は少なく、書いてあることは正直いって、いずれも一般的なことです。何回も愛猫を看取ったようなベテラン飼い主であれば、おそらく、すでに知っている・経験したようなことばかりかもしれません。

けれども、はじめて愛猫の最期に立ち向かう人にとっては、よい指標となると思います。ネットと違って、こういう本の良いところは、体系的に、順序立てて書いてあるところ。ピンポイントの詳細は、いくらでも自分で調べられる時代です。

『ネコの看取りガイド』

「一番大切なのは後悔しないこと」と、本の中に書いてあります。終末期の治療はどこまで必要か、飼い主としてできることはどこまでか、よく考えて、そして、後悔しない最期を迎えるように準備しよう、と。

けれども。

獣医師ではなく、ひとりの飼い主として、言わせてください。

後悔するな、なんて無理です。絶対に後悔します。するんです。これは、どれほど準備しても、どれほど考え、どれほど尽くしても、愛猫が亡くなれば絶対に後悔する。愛していればいるほど、必ず後悔する。

後悔しない飼い主なら、はじめから愛情なんてなかったと、断言してもいいくらい。私だけじゃない、誰に聞いても、猫を心から愛した人なら、例外なく、後悔はします。

それでも。できることはすべてやって、なおしてしまう後悔は、つぎの命につながるような気がします。愛猫以外の猫達にも、さらに優しい気持ちを持てるようになる気がします。

愛猫の最期を看取ることができる、というのは、本当はとても良いことなのです。愛猫を残して自分が先に死んでしまうより、はるかに幸せなことなのです。猫の方が寿命が短いから、私たちは安心して猫を「飼う」ことができるのです。「飼う」とはすなわち「看取る」ということでもあると、私は考えています。

その覚悟がない人は、動物を飼ってはいけません。

『ネコの看取りガイド』

『ネコの看取りガイド』

目次（抜粋）

はじめに
猫の健康を守る10の約束

第１章　猫の一生
終末期の治療はどこまで必要？
猫の平均寿命を知る
ほか

第２章　自宅で行う看取りケア
自宅での「看取りケア」とは
毎日の体高チェックは怠らずに
ほか

第３章　病気のサイン
受診のサイン1　冷たい場所に行く
受診のサイン2　元気がない
ほか

第４章　終末期の猫に多い病気とケア
腎臓の病気の対処法
甲状腺機能亢進症への対処法
ほか

第５章　臨終前後にしてあげること
命の終わりが近づくサイン
安楽死という選択もある
ほか

第６章　スピリチュアルペインを癒す
ペットロスの癒し方
つらさを受け止める対話
ほか

巻末ふろく
今日の体調記録
老猫標準値データ

おわりに

著者について

服部幸（はっとり　ゆき）

東京猫医療センター院長。主な著書に『ネコにウケる飼い方』など多数。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)