平岩弓枝『五人女捕物くらべ』上・下

花のお江戸で女たちが捕物に大活躍。
忠吉郎と小平次が、五人の女岡っ引き達と協力して、江戸の怪事件を解決していく捕物談。
当時の岡っ引きとは専業で食っていけるようなものではなく、本業のかたわら二足の草鞋でお勤めす立場だった。女岡っ引きたちもそれぞれ別に本職を持っている。
おせん=一番の売れっ子芸妓。
おさん=大人気の女役者で座頭。
おまん=若くして琉球屋という大店の主人。
おなつ=別名「猫姫」、将軍家が狩りに使う犬達や幕府の米蔵を守る猫達を飼育・調教する役目の家に生まれた娘。
お七=「花和尚」とよばれる尼僧、大勢の訳あり児たちを引き取り育てている。
男たちは全編を通じて登場。
小平次=神田連雀町に住む岡っ引き。目の鋭い白髪頭の老人。
ぽん太=本名は桶屋の勘太というが、顔と体つきが今戸焼の狸にそっくりなので、狸のぽん太の通称でとおっている。小平次の下で働いている。
本多忠吉郎=出版社等の紹介では小平次を主人公としているが、私の読む限りではこの忠吉郎が主人公。小平次の2階に住む青年武士。素性は知れぬものの、居候の身分にしてはやけに品が良く、頭が切れ、その上妙に顔が広く、特に女の知己が多いという、謎の人物。
以下、猫と関係のある作品についてだけ書きます。
七化けおさん
「狸座」大人気の催し物は「奥州藤原照姫化け猫物語」という怪談。人魂が飛び、燐火が燃え、雷鳴と稲妻が凄まじいばかりに轟いて、という大仕掛けな舞台の幕が引かれた後、観客席で男が死んでいるのが発見される。
おさんこと吾妻三之丞が舞台上で化け猫の役もやるというだけで、猫は出てきませんし、おさんの劇の中で化け猫が何をするか等の説明もありません。
猫姫おなつ
飼い猫「おたま」が行方不明になった。
ただの飼い猫ではない。なにしろその飼い主は尾張大納言家の御簾中様(奥方)・淑姫様が可愛がっていた猫なのだ。ひとつ間違えれば尾州家のお家騒動にもつながりかねない事情もある。猫一匹を探してお屋敷中が大騒ぎ、とうとう忠吉郎も助っ人を頼まれた。
「猫を探すのは、猫姫にかぎる」と忠吉郎が呼んだのは、目黒村に住むおなつという女、あだ名は猫姫。彼女は「猫使い」だった。猫姫は7頭の猫達と一緒に尾州屋敷に乗り込んで調査を開始する。
登場ニャン物=おたま、白雪、おとら、ぬば玉、やみよ、灰かつぎ、みどり丸、耳なし、隠居、ほか。
花和尚お七
黒猫のやみよが本多忠吉郎になついて神田連雀町の岡っ引、小平治の家に住み着いてしまった。ぽん太はどうもこの猫に馴染めないが、忠吉郎は可愛がっている。
森口屋のやり手の女主人が自殺した。が、忠吉郎は殺しではないかとにらむ。
やみよは、膝に抱かれているだけでほとんど何もしないようでいて、いちばん肝心な場面ではちゃんと活躍しますから、猫好きな方はちょっと期待してお読みくださいにゃ。
登場ニャン物=やみよ。
まんだらげ―――猫姫おなつ
猫姫ことおなつの家・四季家は、将軍家が鷹狩りに使う犬を訓練するお役目を負った家系だった。いつの頃からか、幕府の米蔵を守る猫達をも飼育訓練するようになっている。目黒村の壮大な屋敷には、多数の犬猫が飼われていた。
その四季家の長男・長次郎が、何者かに毒を飲まされたらしい。長次郎を守ろうとした忠犬も殺された。おなつは忠吉郎に救いを求める。多数の猫たち・犬たちを率いて、忠吉郎とおなつの調査が始まる。さいごにはネズミの大群も現れて、ワンワン、ニャンニャンの大捕物劇!
登場ニャン物=やみよ、桃太郎、隠居、おとら、おくろ、他多数の猫たち、犬たち、ねずみたち。

平岩弓枝『五人女捕物くらべ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『五人女捕物くらべ』上・下
- 著:平岩弓枝(ひらいわ ゆみえ)
- 出版社:株式会社 講談社
- 発行:上巻=1994年、下巻=1994年
- 初出:「夕刊フジ」連載平成4年4月21日~5年3月27日
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:上巻=4062067731 9784062067331 下巻=4062067463 9784062067491
- 247ページ、216ページ
- 登場ニャン物:やみよ、おたま、白雪、おとら、ぬば玉、灰かつぎ、みどり丸、耳なし、隠居
- 登場動物:-
目次(抜粋)
【上巻】
太公望のおせん
琉球屋おまん
七化けおさん
猫姫おなつ
花和尚お七
【下巻】
遊女殺し―――太公望のおせん
雪の夜ばなし―――七化けおさん
江戸の毒蛇―――琉球屋おまん
文珠院の僧―――花和尚お七
まんだらげ―――猫姫おなつ