久田雅夫『絶滅危惧種ツシマヤマネコ』
日本の貴重なヤマネコの写真集。
対馬列島にだけ生息する、絶滅危惧種のヤマネコ。
それが、ツシマヤマネコである。
サイズはふつうのイエネコと変わらない。
けれども、愛猫家ならひと目でわかるはず。
彼らが、家畜化されたイエネコとはまるで別な存在であることが。
丸い耳(イエネコの耳は三角形)。
両目の間隔がせまい(猫に限らず、家畜化された動物はおでこが丸くなり、目も離れてくる)。
自分の体より大きなキジを捕まえる身体能力。
鋭い眼光に、斑点模様の毛皮。
何回見ても、惚れ惚れしてしまう。
ああ、これぞ、ヤマネコ!
写真家・久田雅夫氏が、対馬の山奥に何日もこもって、苦労して撮影した貴重な写真たちだ。
「野生動物写真家」と聞けば、アフリカの広大なサバンナや、アマゾンの密林、凍てつくシベリアのツンドラ地帯など、現代文明から隔絶された地域を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
けれども、久田雅夫氏は、少し違う。
彼が得意とするのは、我が国、日本の野生動物。
戸川幸夫氏は、久田雅夫氏を紹介して、こう称えている。
日本にはアフリカやインドやそのほかの国々に生息するゾウだのサイだのライオンやトラといった動物園のスターたちはいません。わずかに北海道にヒグマがいるだけです。いうなれば日本の野生動物は外国にくらべて小型で、きわめてじみで、動物園でもそれほど観客の目をひいていません、。
ですから野生動物の写真撮影としては久田さんのやり方は損でしょう。だがこういった仕事こそた動物学からいっても、記録としても大変貴重な存在といえるのです。
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その通りだと思う。
通り外国の派手な動物たちを見る前に、同じ日本に住む、身近な動物達に、もっと注目して欲しい。
そして、彼らが少しでも安心してくらせるよう、お互い心地よく共存できるよう、日本人全員にもう少し注意してほしい。
そのためには、まず、どんな動物が日本に生息しているかを知ること。
この写真集には、ツシマヤマネコだけでなく、ツシマテンやツシマジカなど、対馬列島特有の希少種も掲載されている。
じっくりご覧ください。
そして、もし彼らが間違っても絶滅したりしないよう、どんなに小さなことでもよい、できることがあればどうか、ご協力ください。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『絶滅危惧種ツシマヤマネコ』
- 写真:久田雅夫
- 共著:戸川幸夫、小原秀雄、伊澤雅子、土肥昭夫
- 出版社:風人社
- 発行:1992年
- NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)
- ISBN:493859604 9784938596040
- 79ページ
- カラー
- 登場ニャン物:ツシマヤマネコ
- 登場動物:ツシマテン、チョウセンイタチ、ツシマジカ
目次(抜粋)
絶滅の危機!日本のヤマネコ・・・戸川幸夫
ツシマヤマネコは自然生態系のシンボル的存在である・・・小原秀雄
ツシマヤマネコ
ツシマヤマネコの仲間たち
ツシマヤマネコを絶滅の危機から救うために 伊澤雅子、土肥昭夫
ツシマヤマネコの鳴き声は滅びゆく野生動物の悲鳴に聞こえる・・・久田雅夫