戸川幸夫『人喰鉄道』

戸川幸夫『人喰鉄道』

 

実在した人喰いライオンたち。

1980年代。イギリスは、植民地ウガンダに鉄道工事を開始した。

しかし、サボ(ツァボ)に人喰いライオンの群れが現れ、大変な恐慌を巻き起こす。

当時、イギリス人の指揮の下に、インド人とアフリカ人の労働者達が働いていたが、屈強な男達が毎晩のようにさらわれてしまうのだ。
それも時には一晩で2人、3人とやられる。
ライオンたちの手口は、より大胆且つ巧妙になっていくばかり。
イギリス人の鉄道所長や、猟銃をかまえたハンター達も、次々と殺された。
労働者達は恐怖のあまり統制が効かなくなり、鉄道工事は危機を迎える。

*****

実際にあった話をもとに、戸川幸夫氏が小説化したもの。

当時は人種差別がひどかった時代で、イギリス人にとって有色人種は家畜と大差ない地位に置かれていた。
そのため、殺された人数さえまともに記録されていないが、ある説によると135人、別の説によれば、インド人だけで135人、アフリカ人はそれと同数またはそれ以上と言われているそうだ。
すごい数だ。

小説では、リーダー格はいずれも成雄ライオンで、三本指、欠け耳、黒鬣(たてがみ)と呼ばれている。
もとはといえば、人間が猟銃で傷つけたまま放っておいたライオンで、それが飢えで仕方なく人間を襲い、味を覚えたのである。

ひとたびライオンが人間に対するタブーを破ってしまうと、ヒトはライオンの敵ではなくなる。
圧倒的にライオンの方が強く賢い。
素手のヒトはなすすべもなくライオンの餌食となっていくばかりだ。

最終的には、飛び道具を持った人間達がライオン達を殺してしまうのだが。・・・

戸川氏といえば、イリオモテヤマネコを発見した人としても有名だ。

この小説でも、人喰いライオンとはいえ、戸川氏のライオンに対する深い敬愛ともいうべき愛情が読みとられる。
その点が他の安っぽい動物パニック小説とは全然違う。
だから安心して読める。
最初から最後まで冷静で公平な目で書かれ、読んだ後もライオンに対する嫌悪なんか感じない。
むしろライオンをますます「すごい奴らだ」と褒め称えたくなる。

そう、ライオンって、本当にすごい奴らなのだ。

なお、同じライオンたちを題材にした小説にデューイ・グラム『ゴースト&ダークネス』がある。これは映画にもなっている

(2002.6.22)

(注)
人食いライオンについては、タンザニアの「ミキンダニの人食い」がライオンとしては最高で、一頭で380人も殺したという話もあるが、私には真偽の程はわからない。

(注:追記)
最近、米国のカリフォルニア大サンタクルーズ校やフィールド博物館を中心とするグループが、このツァボのライオンたちの剥製を再調査したそうだ。
遺骨や毛から、炭素と窒素の安定同位体を分析、ヒトと草食動物では同位体の比率が異なることから、食べたと考えられる人数をモデル計算によって求めた。
結果、ライオンたちが食べた人間の数は、1頭が11人、もう1頭が24人の、合計35人であったと、米科学アカデミー紀要に発表。(2009/11/13朝日新聞社のニュースより。)

事件後1世紀以上経てから人数が再調査できるというのもすごいが、これで35人は確実に食べていたとわかったわけで、これもすごい人数だと思う。
殺されたものの食べられなかった人もいるだろうし、被害者数は35人より多かった可能性は大きい。
また、当時のこと、病死・事故死・逃亡者なども、すべてライオンのしわざとされたのではないだろうか。
とすれば、「135人の犠牲者」という数は、ライオンによるものかどうかはともかく、少なくとも「人種差別の犠牲者」としては、正確な数字なのかも知れない。

戸川幸夫『人喰鉄道』

戸川幸夫『人喰鉄道』

戸川幸夫『人喰鉄道』

戸川幸夫『人喰鉄道』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『人喰鉄道』
上巻・下巻

  • 著:戸川幸夫 (とがわ ゆきお
  • 出版社:徳間文庫
  • 発行:1968年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:上巻:4195984599 9784195984598 下巻:4195984602 9784195984604
  • 311ページ、286ページ
  • 登場ニャン物:三本指、欠け耳、黒鬣(たてがみ(野生の人喰いライオンの群)
  • 登場動物:アフリカの野生動物たち

 


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戸川幸夫『人喰鉄道』

8.2

猫度

7.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

8.5/10

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