北浦清人『幸せをつかんだ犬たち』

保護しなければならない犬がいなくなる日を夢見て。
北浦清人氏は、(社)日本動物福祉協会会員で、Yokohama Dog Rescue代表。
北浦氏といえば、私にとっては雲の上の存在のようなものだった。動物愛護界では有名で、関東地方で犬の救助といえば誰もが真っ先に思い出す名前のひとつ。今まで数多くの犬たちを救ってきた。
その北浦氏とて、最初からプロではなかった。犬好きではあったけれど、普通の飼い主だった。ただ違っていたのは、不幸な犬と遭遇して見て見ぬふりはできないという、ただそれだけの事だったかも知れない。
しかし、氏の情熱と実行力はすばらしかった。家族の協力も。
トットコ、トットコ歩くエアデール犬のカーリー、阪神大震災での活動とボルゾイのアル、賢い野良犬ハッピー、捨てられた猟犬ナナ。
とくに猟犬たちの話が私にも重くのしかかる。
私が今住んでいるところでも、猟期になればハンター達がうろつき、やせて怪我をした猟犬がさまよっていることもある。
北浦氏は一頭一頭丹誠を込めて世話をし、治療し、訓練して、あたらしい家へ送り出していく。その手間と苦労は並大抵のことではない。経済的にも。そのため、救える犬の数は限られている。センターに捕獲・収容された犬たちの全員を救ってやることは出来ない。確実に里親がみつかりそうな犬だけを選別するときのつらさ。
北浦氏のかざらない言葉に親近感を感じつつ、やっぱりこの人すごい、とても真似できないと感服する。本当に心の底から犬が好きなのだろう。しかし好きだけでここまではできない。
北浦氏の夢は、保護用ケージがいつかすべて空になり、保護しなければならない犬がいなくなること。しかし、そんな日が近いとは思えない。今日も犬たちはあるいは捨てられ、あるいはセンターで殺処分されていく。犬を飼う(買う)前にどうぞこの本を読んでくださいといいたくなる。
私の夢も、里親募集ページがいつか不要となってくれることだが・・・残念ながら私が生きている間にはまず無理でしょうね。
(2005.5.27)

北浦清人『幸せをつかんだ犬たち』古書店で買ったシールが残っています(汗)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『幸せをつかんだ犬たち』
- 著:北浦清人(きたうら きよと)
- 出版社:平凡社
- 発行:1996年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4582539149
- 215ページ
- 登場ニャン物: -
- 登場動物: 犬多数
目次(抜粋)
- はじめに
- “NO BAD DOGS”
- アル、ロッキー、震災からの生還者
- 飼い主を持たなかった名犬
- グリ、桜の花の咲く頃に
- 穴蔵母さんと子犬たち
- 捨てられたナナ―猟犬を再生する
- ある一日
- レスキューマニュアル
- あとがき

うちの保護犬ゴンも、捨てられた猟犬だったかもしれない。