宮部みゆき『天狗風』

宮部みゆき『天狗風』

 

霊験お初捕物控(二)。

霊験お初シリーズ第二弾だが、別に第一弾を読んでいなくても十分に楽しめる。
もちろん、余裕のある方は是非第一弾から読んでほしいが。

他ならぬ宮部みゆきさんの本、面白いのは言うまでもない。

主人公のお初は、人には見えぬものが見え、聞こえぬものが聞こえる霊能力者である。
お初はその能力を最大限に活かして、恐ろしい犯罪を解いていく。

化け物あり、‘死人付き’あり、怨霊ありの、ちょっと現実離れした世界だけれど、そこは物語、現代的な科学知識などは忘れて、思い切り楽しんでください。
幽霊だの呪いだのがでてくる割には、全体的に非常に明るくて健康的だ。
主人公のお初は元気一杯の少女だし、ストーリーのテンポも小気味よく、読み出したら止まらない。

さて、第一弾「震える岩」には猫のねの字も出てこないが、「天狗風」では猫が大活躍する。
名前は鉄。
人語をあやつり(お初にしか聞こえない)、神出鬼没、時には化けてさえみせる猫だが、普段はかわいい子猫。
鍵しっぽで、手足の先が足袋をはいたように白い、小さなトラ猫ちゃんである。
人への甘え方も心得ている。

その鉄と、仲間の猫達、および、人間のお初達が力を合わせ、恐ろしい‘天狗’と戦う。
さてこの‘天狗’の正体とは一体?

鉄は、いわば化け猫である。
なにしろ化けて人を脅かすことだってできるのだから。
が、宮部みゆきさんはそんな鉄をとても可愛く描いてくれている。
憎めないキャラクターで、賢くて機転が利き、おしゃべりでお調子者。
こんな子猫なら化け猫でも良いから是非会ってみたい、一緒に暮らしてみたいと思ってしまう。

他の宮部みゆきさんの動物ものでは、「パーフェクト・ブルー」や「心とろかすような」の用心犬マサが面白かった。
鉄もマサも人間のように考え、話し、行動する。
宮部みゆきさんの動物達は、どの子も賢く、人間より頼りになる子ばかりのようだ。

(2004.03.18)

宮部みゆき『天狗風』

宮部みゆき『天狗風』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『天狗風』
霊験お初捕物控(二)

  • 著:宮部みゆき(みやべ みゆき)
  • 出版社:講談社文庫
  • 発行:2001年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:4062732572 9784062732574
  • 573ページ
  • 登場ニャン物:鉄、すず、和尚
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

  • 第一章 かどわかし
  • 第二章 消える人びと
  • 第三章 お初と鉄
  • 第四章 武家娘
  • 第五章 対決
  • 解説 清原康生

 

著者について

宮部みゆき(みやべ みゆき)

1987年『我らが隣人の犯罪』でオール読物推理小説新人賞を受賞。89年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス対象、92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年『火車』で山本周五郎賞、99年『理由』で直木賞を受賞する。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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