根本竜生『猫戦争膝栗毛』
日本猫軍、対、日本人間軍?
4月1日のエイプリル・フールに国連で提出された「世界戦争および紛争撤廃条約締結案」。
大多数の国がハッピージョークと勘違いし、うっかり賛成してしまったから、さあ大変。
世界中のどの国も戦争ができなくなってしまった。
ヒトとは愚かな生き物、戦争無しでは生きていけない。
かとて今更条約を白紙にも戻せず、困った挙げ句に人間たち、こともあろうに動物達を代理で戦争させることを思いついた!
最初はグリズリーやアフリカゾウなど力の強い大型動物軍が採用された。
次に人間用の兵器がほぼそのまま使えるサル軍が優勢となった。
しかし、最終的に、世界最強の軍団として勝ち残ったのは、ペット猫たちによる日本猫軍であった!
日本猫軍はアメリカ犬軍101部隊を破り、日本は世界最強軍事大国となる。
が、その日本猫軍に一大事が。
人間にとってはどうでもよいようなこと、しかし、猫たちにとっては死活問題。
なんとか解決しようと奔走する猫たち。
そしてなんと日本政府(人間)と戦争することに!
間軍は卑怯にも犬軍や猿軍やカラス軍まで餌等で買収。
猫軍には他に援軍なし。圧倒的不利!さて、戦況いかに?
* * * * *
なんとも面白い猫小説。
戦争の話なので、戦死者(戦死猫)は出てきます。
がそれ以上に猫たちが痛快で読んでいて実に楽しい。
「猫式バズーカ」のルビは「猫パンチバズ」、「猫歩兵団」のルビは「ニャーミー」、「肉球対応機関銃」のルビは「チチャキャット」、「犬地雷」は「ペテグリー」等々、名前だけでも笑ってしまう。そして世界最強な猫軍の最大の敵は「ペットボトル・バリケード」(笑)。
猫たちの性格がまた実に良い。
どの子も軍を離れればごく普通の、甘えんぼうでコタツ大好きなペット猫にもどる。
どの猫も人間より頭が良く、人間より勇敢で、人間より仲間思いで、それでいて皆飼い主の人間は大好きで、人間よりはるかにカッコイイ!
それから、本の中に猫好き人間があふれているのも気持ちよい。
猫に理解を示さない総理大臣にたちまち、「五百二十万通を超える子供達からの非難の手紙、三千五百万の署名が書かれた陳情書が届けられ」たりするのだから。
猫好きはもちろん、猫嫌いの人でも、特に男性は楽しめるかも?
傲慢で強欲な人間にくらべ、猫たちの望みのささやかさにも、にっこりさせられる小説です。
(2005.2.4. 管理人)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫戦争膝栗毛』
- 著:根本竜生(ねもと りゅうしょう)
- 出版社:文芸社
- 発行:2002年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4835532996 9784835532998
- 225ページ
- 登場ニャン物:ゴエモン(遠藤ココナ)、助六(今石八兵衛)、石原ニャー次郎(河村ドルバッキー)、ニャンヌ・ダルク(亀田パピー)、垂木ブー(矢部茶々丸)、トーマス・マンテル、オビ・ワン・ケノービ、ゴルゴ・ニャーティン、ジロチョー、越前、ブシェミ、ジャニス
- 登場動物:犬、サル、カラス、等
目次(抜粋)
- 第1章 これがニャンコの夜明けゼヨ!(坂本ニャン馬)
- 第2章 我々はノホホンとした昼寝を愛する。(ペリニャンクレス)
- 第3章 甘えるべきか、すねるべきか。それこそ問題なのだ。(ニャークスピア)
- 第4章 ニャンコの礼(ニャン国志演義)
- 第5章 ニャンコにこたつを与えよ、しからずんば死を与えよ。(パトリック・ニャンリー)
- 最終章 老猫は死なず、ただ寝るのみ・・・・。(石原ニャー次郎)
- あとがき