たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』全12巻
腕は良いけど、どこか頼りない先生。
あらすじ
高円寺達也(こうえんじたつや)は、数年間の勤務獣医師を終えて、古ーい動物病院を任されることになった。
その記念すべき1日目、病院についてみると、その玄関には張り紙が。
看板はおろした 徳丸 あとは若造獣医師にまかせたのでよろしく!
page6
病院の看板まで外されて、かわりに「仮動物診療所」の張り紙。老獣医師の徳丸先生は、申し送りもせずにさっさと田舎に隠居してしまっていたのだ。
それまでの気楽な勤務医との違いが痛感させられる。何もかも一人でやらなければならない。診察はもちろん、手術も、受付も、会計も、雑用も。失敗しても全部自分の責任。
プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、まず何より先に、AHTさん(動物看護師)を確保しなければやっていけない。
しかし、古い設備の古い病院に良いAHTはなかなか来てくれず。
そんなある日、車にはねられた犬をかかえて男の子が飛び込んできた。どこの犬かわからないけれど、とにかく治療を!
と、そのとき、男の子のケータイのGPSを追って母親も飛び込んできた。動物病院で診てもらうってものすごーくお金がかかることなの!と男の子を叱ったあと、
「うちコが関わった以上なんとかしなくてはっ 取り合えずオーナーさん捜しっ 大地(息子の名前)はそれまでの間ここに来てケージの掃除とか出来る事やるのっ 大好きなわんこの側にいられるしいいわねっ」
「OK!」
「当面の段取りよ。お世話かけます――先生」
「・・・・・はぁ・・・・・(しきられた)」
page103
テキパキと的確な指示。実はAHT歴10年のベテランさんだった。
その後もすったもんだあった後に、無事彼女が就職してくれて、なんとか病院経営の歯車が回り出す。
感想
獣医師としての腕は一流だが、生活力のないお坊ちゃん先生。夫が生死不明の行方不明のまま、一人で子育てをしているトキワさん。動物が大好きな男の子。捨てられた犬のダイキチ。地域猫出身の猫オギ。
「坂の上動物病院」のスタッフはそれだけです。ときには獣医師の友人に助っ人をたのまないとならないことも。
場所は東京都新宿区神楽坂。大東京の繁華街のすぐそばに位置しながら、大正時代から続く花街の伝統的な風情をいまだに色濃く残した街です。
坂の上動物病院は、そんな街の雰囲気にぴったりな、人情あふれる病院なのでした。
登場人物たちは、今どきの若者や大企業経営者から、芸者さんや伝統に頑固な職人さんまで、実に個性豊か。連れてくるペットたちも個性豊か。
コオ先生は、そんな人たちや動物達に戸惑いつつも、ひとたび動物診療となればビシっと決めてくれます。近代設備が整った大動物病院でも断るような難しい手術だって、コオ先生は成功させちゃいます・・・追い詰められれば、ですけれど。
2018年、相葉雅紀さん広末涼子さん出演のTVドラマにもなりました。
猫や犬と暮らしている方はもちろん、動物が好きなら誰でもほんわり笑顔になれるお話ばかりのコミックでした。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
著者について
たらさわみち
作品に『ただいまポップコーンエイジ』『逃げろ!アイドル』『シドニー・ボーイ』『バイエルンの天使』『MF動物病院日誌』『おいでよ動物病院!』『しっぽ街のコオ先生』他多数。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『僕とシッポと神楽坂』全12巻
- 著:たらさわみち
- 出版社:株式会社 集英社クリエイティブ
- 発行:2012年~2017年
- 初出:集英社『office YOU』2012年~2017年
- NDC:726(マンガ、絵本)マンガ
- ISBN:9784420152648(第1巻)
- モノクロ
- 登場ニャン物:オギ(オヤジギャル)他多数
- 登場動物:ダイキチ(犬)、その他多数の犬たち