植松黎『毒草を食べてみた』

ときには著者自身が自分の体で実験して!?
【猫に危険な植物】というコンテンツを作ったものの、まだまだデータも情報も足らない。で、現在データ収集中。といっても本を乱読しているだけですが。
そんな時、目に付いたのがこの本。なんか見たことのある著者名だぞ。え、あの「ポケット・ジョーク」シリーズの著者?ジョーク集と毒草と、どう結びつくんだろう?
意に反してしごくまじめな本だった。
ただし本の内容は、ジョークどころではなかった。相当恐ろしいことがさらっと書いてある。
もちろん、本の内容は人間が対象である。しかし人を殺すほどの毒なら、身体の小さな猫はもっと簡単に死んでしまうだろう。
ふつう、毒草と聞いて、何種類を答えられるだろうか?都会人なら、実際にあった殺人事件で有名なトリカブト、アヘンのケシ、ソクラテスの処刑に用いられたドクニンジン程度ではないだろうか。
しかし、毒草の種類はそんなものじゃない。この草、あの花、ごく身近な草木にも、毒成分は多く含まれているのだ。
たとえば、高速道路の横に排ガスにまみれて生えているキョウチクトウ。これは、あのアレキサンダー大王の軍隊を死の恐怖に陥れた心臓毒を持つ毒草だった。青酸カリより猛毒だという。もしこの枝を猫がかじったら?
スズランの可憐な姿は、ダイアナ元英妃のウェディングドレスをも飾った。このスズランには猛毒(心臓毒)があり、花を活けた水を飲んだだけで死んだ少女もいるという。日本の伝統的花器は水盤型が多く、猫がその水を飲むこともある。もし知らずにスズランを活けて愛猫が飲んでしまったら?
スイートピーや水仙、アイリス等も人気のある花である。しかしこのいずれにも毒があるそうな。
また、ポインセチアや、クリスマスローズ。皮膚炎などを起こす毒性分があるという。キリスト教徒でもないくせに、クリスマスに浮かれる日本人の何人がこのことを知っているだろうか。
もちろん、これらの毒成分の多くが、うまく使えば有益な薬ともなるわけだが。
自然のしくみって、なんて複雑で神秘的で巧妙なんだろう。
PS.
夏目漱石「それから」の中に、ヒロインの三千代が鈴蘭の活けられた鉢の水を飲んでしまうシーンがある。疑問に思って漱石にも植物にもお詳しい椿わびすけさんにおたずねしたところ、漱石は毒性の強いドイツスズランではなく、日本在来種の鈴蘭(別名君影草)を考えていたのではないかとのこと。病がちな三千代に君影草という花はいかにも似つかわしく、納得した次第である。
(2007.8.25)

見た目がかわいいからって、毒草は食べないでね

植松黎『毒草を食べてみた』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『毒草を食べてみた』
- 著:植松黎(うえまつ れい)
- 出版社文藝春秋 文春新書
- 発行:2000年
- NDC:471.9(応用植物学、有毒植物)
- ISBN:4166600990 9784166600991
- 221ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場生物:植物たち
目次(抜粋)
1話 ドクウツギ 別名はイチロベゴロシ
2話 バイケイソウ 一つ目の胎児を産む妊娠十四日目の恐怖
3話 キョウチクトウ アレキサンダー大王の軍隊を打ち倒した毒草
4話 トリカブト 解毒剤はいまだにない
5話 フクジュソウ 元日花といわれるが…
6話 キナ もし世界の平均気温が二度あがったら
7話 バッカク LSD誕生の瞬間
8話 シキミ 抹香くさいとはシキミの臭い
その他全44話