山内昶『ヒトはなぜペットを食べないか』

山内昶『ヒトはなぜペットを食べないか』

犬肉に舌鼓をうつ人がいる一方、犬を我が子より愛する人がいる。

ドキッとするようなタイトルの本だ。
が、しかし、ヒトが肉食獣であり、且つ、みずからの飢えをしのぐためなら何でも食べる地球上最強の雑食動物でもあることを考えれば、こんなに身近にいる動物を食べないと言うのは確かにおかしい。

もちろん、過去においては食べていたのである。
ヒトでさえ時には食べるのがヒトという動物だ。
そして今でも地域によっては食べられている。
犬も猫も。

ヒトは野生動物をはじめ、自分が手塩にかけて育てた豚などの家畜は食べるのに、なぜそれがペットとなると食べなくなるのか。
それどころか、なぜペットを食べるという行為にこれほどの嫌悪感を抱くようになるのか。
その心理構造を探る。

その一方で、ペットを愛する人々がいる。
健全な愛情ばかりではない。
動物を性行為の対象と見る人も少数だが存在する。
現代生活の中では異常者と見られるが、伝承民話の世界ではヒトがヒト以外の異種の動物と交わる話はめずらしくない。

また、ヒトから動物、あるいは動物からヒトへの変身話というのもある。これも世界中に見られるテーマだ。

おもしろいことに、ヨーロッパと日本をはじめとする東洋では、明らかな差が見られるそうだ。
ヨーロッパでは、動物から人間への変身は少なく、する場合でも悪魔などなんらかの媒介者を必要とする場合が多いのに対し、日本では動物からヒト、あるいはその逆が、気楽に自らの意志で行われたりするのだそうだ。

この本は、「食」と「愛」という最も本能的な行為を通して、その裏に見られる心理を考察した本である。
決してゲテモノ食いの本ではない。

世界に広く見られるインセスト・タブー(近親婚タブー)はなぜタブーなのか?
「近親婚は遺伝学上不利だから」などというのは、ごく最近になってやっと判明した事実だ。
未開人が遺伝学的統計を知っていたとは思えない。
にもかかわらず、世界中に同じタブーが見られるのはなぜか。

人間は、どこからどこまでを「同じ親族(うから)、族(やから)として同胞(はらから)視」するのか?
その「同胞」に動物は含まれるのか?ペットは?

猫を虐待するような話は出てきませんから、猫好きの方も安心して読んでください。

(2007.12.27.)

山内昶『ヒトはなぜペットを食べないか』
山内昶『ヒトはなぜペットを食べないか』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『ヒトはなぜペットを食べないか』

  • 著:山内昶(やまうち ひさし)
  • 出版社:文藝春秋 文春新書
  • 発行:2005年
  • NDC:383(風俗習慣、民俗学)
  • ISBN:4166604392 9784166604395
  • 193ページ
  • 登場ニャン物:
  • 登場動物:

著者について

山内昶(やまうち ひさし)

東京生まれ。京都大学フランス文学科卒業、同大学院(旧制)修了。パリ大学高等研究院に留学。甲南大学名誉教授。フランス文学、文学理論、社会思想、人類学、比較文化学・文化史を研究。著書に『ロマンの誕生』『現代フランスの文学と思想』『経済人類学の対位法』『青い目に映った日本人』『食具』など。共著に『エンゲルスと現代』『カステラ文化誌全書』など、他に翻訳多数がある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

ショッピングカート

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA