渡辺眞子『捨て犬を救う街』
不幸な犬猫を1頭でも減らしたい!。
犬の話が中心だが、犬と暮らしている人はもちろん、猫と暮らしている人も、今は暮らしていないがいつか暮らしたい人も、犬猫と暮らしたくても暮らせない人も、そして、犬猫と暮らしたくない人も、・・・要するに、日本人全員に読んで欲しい本。特に頭の柔軟な若い世代に、これからの日本を背負っていく世代には絶対に読んでほしい本。
今は空前のペットブームだという。血統書犬が町中にあふれている。年間に新たに産まれる血統書犬は50万頭以上だと、つい今日(2004/10/10)のテレビで言っていた(TBS)。1年で50万以上!その繁殖を担っているのは、多くはパピーミルと呼ばれる悪質な繁殖屋たちと、‘消費者’たち。つまり、普通の飼い主達だ。
それらの膨大な数の犬達はどこへいってしまうのか?犬は人より寿命が短い、では済まされない数。どこへ?
気が遠くなるほどの数の犬猫達が、・・・生きて、食べて、眠って、遊んで、愛情豊かに暮らしている犬猫達が、気軽に使い捨てされているという現実を、どれだけ多くの人達が知っているのだろう?
今日のTBS番組で、ある繁殖屋の元バイトが言っていた。
「産まれてくる子犬たちのうち、育つのなんて半分くらいです。鼻がなかったり、内蔵が飛び出ていたり、半分は死んでしまう」。
なぜそんな悲惨なことになるかと言えば、あまりに飼育環境が劣悪だからである。体を伸ばして立ち上がることさえできないような狭いケージに入れられた‘血統書犬’。その中で死ぬまでひたすら繁殖を繰り返させられる。
一般の誤解、血統書がついている犬=良い犬、については?
日本最大の血統書発行団体、JKC(社団法人ジャパンケネルクラブ)の某お偉いさんは、明言していた。
血統書は、書類申請だけで発行していると。
日本最大の犬の権威団体は、決して犬の実物は見ないし、決して遺伝的疾患等についての調査もしないし、将来そうする予定もまったくないと。
要するに、乱発。
「だって、そうでしょ?もしこの犬は大丈夫なんていって、なにかあったら困るじゃない?」
だから、そういう判断は‘我々素人’はしないのだと。
その理事は、はっきりそう言っていました。
日本最大の犬血統書発行団体は‘犬の素人’だと。
そして、その乱発された血統書を後生大事に奉って、ブランド犬を求める日本人達。飽きれば保健所に。年間、犬猫合わせて53万頭・・・
保健所での法定留置期間はわずか3日だ。離乳前の子犬や、飼い主に寄って持ち込まれた猫(80%が子猫)は、翌日には殺処分してしまう自治体も多い。
本に、マルコ・ブルーノさんのインタビューが載っている。(p156~)
《「落とし物の傘だって、六ヶ月間は保管されます。それなのに動物は維持費がかかるから、最短のところで三日、長くても一週間で殺される。役所や保健所に良く行きますけどね 『貴重なご意見をありがとうございました』、とか 『前向きに検討させて頂きます』って言われます。それは、何もしないということ」
(中略)
新聞のコラムに「中身よりイメージばかりを気にしている日本の行政は、全国に散らばっている処分施設に『動物愛護センター』『動物保護センター』などの看板をつけ、殺処分のことを『安楽死』と偽っている。そのため、国民のほとんどは現実を知らない」と書いたところ、当の行政から「イメージが悪くなるではないか」とのクレームが来た。》
なんともうすら寒い話だ。
渡辺氏は書いている。
「動物達を守るには・・・動物は決して捨てない。捨てそうな人には飼わせない。それ以上、増やさない。避妊・去勢手術を徹底して浸透させる。絶対数を減らす。犬猫を店舗で買うのではなく、シェルターや保護収容の施設から引き取る。ほんのスタートに過ぎないけれど、理解してくれる人が増えれば、それが多くの生命を救うことにつながる。」・・・
最後に、本とは関係ないが、TBS殿に一言。
日曜日のゴールデンタイムに一時間の特集番組を組んでレポートする前に、この本を読んでほしかった。
「犬を購入するときは劣悪なペットショップからではなく、自分でブリーダーを探して購入しましょう」
という 以前に、もっと大事なことを伝えて欲しかった。
「犬と暮らしたい人は、まず、保健所や里親募集の犬達から探しましょう」
と。
その一言がなかったのがいかにも残念だ。
とはいえ、ゴールデンタイムに番組ありがとうございました。
(2004.10.10)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『捨て犬を救う街』
- 著:渡辺眞子(わたなべ まこ)
- 出版社:角川書店 角川文庫
- 発行:2002年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)\
- ISBN:4043684010 9784043684014
- 227ページ
- 登場ニャン物:
- 登場動物:
【推薦:あんこ様】
動物愛護のすすむサンフランシスコにおける動物保護や飼い主たちへの教育プログラムなどを紹介するとともに、日本の動物がおかれている悲惨な状況を報告した本です。
捨てない・増やさない(去勢・避妊手術の推進)・一緒に生きる道を探すという自覚を飼い主に持たせることで、不幸なペットを少しでも減らしたい!という渡辺さんの切なる願いが込められた本です。
犬が中心に書かれてはいますが、勿論、猫にも共通する話です。
(2002.12.1)