山村美紗『猫を抱いた死体』

山村美紗『猫を抱いた死体』

TVドラマにもなっている〈葬儀屋探偵〉明子シリーズ。

軽いミステリー短編集。

葬儀屋探偵・明子は、テレビドラマ化もされている人気シリーズである。
テレビでの(最近の)配役は、片平なぎさ、大村崑、山村紅葉、神田正輝、等。

石原明子は家業を継いで、京都で葬儀屋の社長をしている。
社長といっても実態は、ベテラン社員・秋山隆男におんぶにだっこの、まだまだ頼りない若社長だ。
社長としての自覚も責任感も足らなさすぎ・・・恋人の黒沢晴彦が来ればたちまちソワソワして仕事そっちのけになるし、ましてや、死体に不審な点でも見つけようものなら、もう仕事どころじゃない、探偵ごっこに走り回る。
こんなんで葬儀屋社長が務まるの?

なんて、明子の批判をしちゃったついでに、他の主要登場人物についても書くと。

秋山は人死にがあるたびに欣喜雀躍、葬儀の受注取りに死にもの狂い。葬儀屋としては優秀なんだろうけれど、なんだかなあ、私には違和感。
(テレビドラマで大村崑演じる「秋山さん」は、さすが大村氏のお人柄、口うるさいが好人物で憎めない番頭さん、って感じで、好感度は高いのだけど。)

明子の恋人・黒沢は医師。
東京在住だが、頻繁に京都に出張して来、葬儀や死体を食事の話題に、楽しくデートするという神経の持ち主。
鈍感そうだし、暇そうだし、公費の私用流用甚だしく(「教授のかばん持ち」だって出張なら公費ですよね)、ろくな医者じゃないんだろうなと思うのは、私の偏見か。

しかし一番の問題児はやはり、狩矢警部だと思う。
部外者の明子に捜査の内情をボロボロ漏らすばかりか、事あるごとに「明子さん」と一般人の推理力をあてにする。
もしこれが実在の人物だったら、ウィキリークスどころじゃない情報漏えい屋だ。

となると、レギュラーでまともなのは事務員の良子くらいか?
(ドラマでは「良恵はん」として、山村美紗の娘、山村紅葉が好演。)

さてと。

猫は表題の『猫を抱いた死体』に出てくる。

幼い女の子が、猫を抱いたまま、ひき逃げされた。
発見された時には、女の子も猫も、すでに死んでいた。

その葬儀の依頼が明子の会社に来て(秋山が取ってきて)、明子たちは準備に追われる。

「あの猫も、一緒に棺の中に入れてやりたいのですけど、いいでしょうか?」
「いいんじゃないでしょうか。きっと、お子様も喜ばれますわ。お友達が一緒で」

当初は単純なひき逃げ事件かと思われたが、その後、この猫が大きなヒントとなって、殺人事件であったことが判明するのである。
さすがは猫。
無言の死体と成り果てた後も、立派に、自分と女の子の敵を討ってみせたのだ。

(2012.12.5.)

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『猫を抱いた死体』
〈葬儀屋探偵〉明子シリーズ

  • 著:山村美紗(やまむら みさ)
  • 訳:姓名(ひらがな)
  • 出版社:新潮社 新書
  • 発行:平成5年(1993年)
  • NDC: 913.6(日本文学)短篇推理小説集
  • ISBN:ISBN : 4103607068 9784103607069
  • 232ページ
  • 登場ニャン物: マー
  • 登場動物: -

目次(抜粋)

  • 猫を抱いた死体
  • 消えた配偶者
  • 血の鎮魂歌
  • 死を呼ぶカーディガン

著者について

山村美紗(やまむら みさ)

生まれ育ち、現在も住んでいる京都の四季おりおりの表情を作品の背景に自然にとり入れ、読者の強い支持を受けている筆者だが、平安遷都1200年のための講演に、帯広などの北海道取材旅行に、そして執筆にと眼の回るような忙しさのなか、今年はとうとう葵祭(5月15日)を見に出かけられなかった。7月の祇園祭は、三船祭(5月第3日曜)とともに、とりわけ好きな祭なので、なんとか都合をつけてと、今から計画をたてている。この明子が活躍するTVシリーズも好評で次々最新作が放映される。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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山村美紗『猫を抱いた死体』

4.5

猫度

1.5/10

面白さ

6.0/10

おすすめ度

6.0/10

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