岩崎るりは『猫のなるほど不思議学』
副題「知られざる生態の謎にせまる」。
ブルーバックスで猫本が出たというので早速買ってみた。
結論。
皆様もぜひお読み下さい。
今までこういう猫本は、獣医師またはサイエンスライダーまたは猫好きなエッセイエストによって書かれたものがほとんどだった。
猫ブリーダーが書く猫本といえば、飼育マニュアルばかりだった。
私はいわゆる「ブリーダー」に対しては強いマイナスイメージを持っている。
今まであまりに数多くの悲惨なケースを見聞してきたからだ。
金儲けしか考えてないブリーダー、いや、繁殖屋。
素人ブリーダーの多頭飼育崩壊。
近親婚や無理な連続出産により産まれながら障害を持ってしまった子猫たち。
劣悪な飼育環境。病気の蔓延。その他その他。
日本には本来の意味での「ブリーダー」なんていないのではないかと疑いたくなるほどだった。
著者の岩崎るりはさんは、しかし、私が「ブリーダーとはこうあるべき」と考えるブリーダーのようだ。
猫の知識はとても深くしっかりしている。下手な獣医師よりよほどくわしい。
自然な繁殖活動は「繁殖」、人間が意図してブリードさせることは「蕃殖」と、はっきり分けて書いているのには非常に好感を持てる。
正しいブリーダーとは「私財を投じてその猫種のために貢献する」人、「それなりの職業につくか、または蕃殖とは別の収入源をもっており、そのすべてを猫に注ぎ込むことを楽しみとし」ている人だと書いている。自分の生活のために猫を売る人をブリーダーとは認めていない。
そして、自身が血統猫を蕃殖するブリーダーでありながら、「皮肉なことにも『雑種にまさる可愛い猫はないかもしれない』という感が大です」とか、雑種猫の「飼育のしやすさが目立ってしまうのです」などとも書いている。
血糖猫もいわゆる雑種猫も、同等の価値ある猫として見てくれているのが嬉しい。
この本を1冊読めば、飼い猫のルーツ、猫の能力や性格について、品種についてと簡単な説明、猫の遺伝学、健康と食事、病気の早期発見法、など、具体的に知ることができる。
また、猫の毛色と性格の関連性など、数多くの猫たちに実際に接した経験がないと書けない内容もあり、面白い。
分厚い専門書より、この一冊の方が、ずっと良くまとまっていて読みやすいし、情報も盛りだくさんだ。
まあ、無理に難を言えば、昨今の捨て猫問題や動物虐待、素人蕃殖などについて触れていないことか。
一章でいいから注意や警告を書いてくれたら、言うこと無かったのだが。
とはいえ、この内容で1040円ならホント安い。
図書館で借りるより、なるべく購入して手元に置いて下さい。
決して損はさせません。
おすすめ。
(2006.5.17)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫のなるほど不思議学』
知られざる生態の謎にせまる
- 著:岩崎るりは(いわさき るりは)
- 監修:小山秀一(こやま ひでかず)
- 出版社:講談社ブルーバックス
- 発行:2006年3月
- NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)、645.6(畜産業・家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4062575132 9784062575133
- 302ページ
- 登場ニャン物:
- 登場動物:
目次(抜粋)
- 第1章 ナマケモノを装う賢者 猫のライフスタイル
- 1-1 猫はどうやって人間を飼いならしたか?
- 1-2 猫の分類とルーツ
- その他
- 第2章 猫の体と感覚器 猫の超能力
- 2-1 バケネコそれとも忍者?猫の身体能力の秘密
- 2-2 NASAも研究した(?)「猫の平衡感覚」
- その他
- 第3章 セックスライフ 初公開・十猫十色のマル秘事情
- 3-1 いったい誰の子?生殖の不思議
- 3-2 何発やれるか猫のオス?―トゲつきペニスで濃厚精液を連射
- その他
- 第4章 猫種と相性 よきパートナーにめぐり会うには?
- 4-1 雑種vs.血統種
- 4-2 品種改良とブリーダー
- その他
- 第5章 知ってブックリ、猫の遺伝学
- 5-1 環境と遺伝 猫の運命を決めるのはどっち?
- 5-2 ファッショナブルな猫毛の遺伝
- その他
- 第6章 健康と食事 猫を長生きさせよう!
- 6-1 猫の寿命はどこまでのばせるか
- 6-2 猫はグルメか味音痴か?―猫舌の科学
- その他
- エピローグ 吾輩は猫の飼い主である
- 監修者あとがき
- 参考文献リスト
- さくいん