赤川次郎『三毛猫のホームズの復活祭』
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三毛猫ホームズシリーズ第52弾。
あらすじ
オレオレ詐欺にひっかかって、大金を盗られてしまった高齢者。ショックのあまり、さらなる不幸にみまわれてしまう被害者もいる。被害者だけではない。騙す方も、実はそうとは知らずに、自身も騙されて行動していた場合がある。そのような「騙されていた加害者」は「騙された被害者」よりさらに悲劇な場合だってある。闇組織の幹部は、末端組織の人間に対しては非情きまわりない。
悪い連鎖を止めるには、闇組織のトップを逮捕しなければならない。
さて。ここは全寮制のお金持ち高校。旧修道院を学校に改造したもので、石造りの堅牢な建物、豪奢な内装、まるで一流ホテルだけど、建っている場所は辺鄙な山の上。
春休みに入っても寮に残っている生徒がいた。複雑な事情で、帰る家がない子だ。他にも料理担当のおばさんや、先生の中にも残っている者がいた。
そこへ刑事としてやってきた片山義太郎。闇組織のトップを突き止めるため、わずかな手がかりを基に、ダメ元ではるばる足を運んできたのだ。当然ながら、妹の晴美と三毛猫ホームズも一緒である。この二人は別に警察官とかではないんだけどね。
そして例によって「事件」が起こる。もちろん、殺人事件・・・
感想
三毛猫ホームズシリーズでは、時間は止まっています。片山義太郎も晴美も石津も、そしてもちろんホームズも、全然歳を取りません。片山はいつまでも平刑事のままですし、晴美と石津の関係も進行しません。アニメのサザエさんと同じ。
ま、それも仕方ないです。だってこのシリーズの主役は猫のホームズ。猫は人間の4倍の速さで歳を取りますから、もし実世界と同じように月日が進んでしまったら、ホームズはとうの昔に寿命が尽きてしまわなければなりません。猫の平均寿命は、ペット保険のアニコムによれば15歳くらい、でもこれはペット保険に加入させるくらい大切にされている飼い猫の話であり、一般的な飼い猫、とくに外出自由な昔ながらの飼い方の猫は、もう少し短くなります。野良猫の平均寿命はわずか3~4歳。ホームズの初登場は1978年、その時の紹介で「以前に腫瘍をつくって子宮摘出手術をした」と書かれているのですから、すでにそれなりの年齢の成猫であったことになります。時を止めておかないと、三毛猫ホームズシリーズ、続けられないんですよね。
登場人物たちの時は止まっていますけれど、内容は時代に沿って、新しい(?)犯罪もどんどん取り入れらています。
「オレオレ詐欺」。流行りましたね(ってか、今でも流行っている)。この種の特殊詐欺は、「振り込め詐欺」だの、「なりすまし詐欺」だの、「母さん助けて詐欺」だのと、様々な名称で呼ばれたりしてきましたが、やはり「オレオレ詐欺」という呼び方が一番しっくり来るような気がします。
今回の事件は、その「オレオレ詐欺」から始まりますが、話は思わぬ方向へ進んでいきます。ちょっとした移動にもヘリコプターを使うような資産家のお嬢さんたち。私なんかタクシーだって滅多に使わないのに(使えないともいう・・・汗)。ホームズは随所で良い働きをみせますが、ちょっと猫離れしすぎていない?もっと猫らしいしぐさとかみせてよ。
一箇所だけ気になったのは、石津の「懐かしいホームズさんのお声ですね」(page121)というセリフです。晴美に片思い中の石津、用があっても無くても片山家にベッタリで、常に一緒に行動していたんじゃなかったの?最近は少し離れていた?石津、何があった?(笑)
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『三毛猫のホームズの復活祭』
三毛猫ホームズシリーズ第52弾。
- 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:光文社 光文社文庫
- 発行:2020年
- 初出:「小説宝石」2017年1月号~2018年3月号
- NDC:913.6(日本文学)推理小説
- ISBN:9784334790195
- 354ページ
- 登場ニャン物:ホームズ
- 登場動物:-
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