赤川次郎『三毛猫ホームズの懸賞金』
三毛猫ホームズ第54弾。
あらすじ
どこにでもいるような、ごく普通のサラリーマン男性。誰にも怨みを買いそうな人間ではなかったのに、ある日、殺された。しかもなぜか、事前に自分が「命を狙われている」ことを知っていた。犯人も動機もさっぱりわからない。
一方、警視庁捜査一家の片山義太郎は、昔の知人ルミ子に呼び出されていた。彼女は芸能プロダクションで、歌手・百瀬太朗のマネージャーをやっていた。何年も前に1曲だけヒットを飛ばした後はまったく売れず、今は地方の小劇場をドサ回りの日々だ。歌唱力はあるのだが。
そんな落ちぶれた歌手に、脅迫メールが届いたという。その内容が、しっかり歌わなかったら殺す、という妙なもの。
片山は(なぜか妹の晴美と猫のホームズも)百瀬が歌うパーティを見張り、百瀬は力を込めて歌った。脅迫者もその場にいたららしい、よかったと褒めるメールさえ来た。
が、同じステージでいい加減に歌った人気歌手が殺されて・・・!
感想
平凡なサラリーマン、人気タレント、男性、女性、等。あるいは殺され、あるいはあわや命を狙われ。
被害者に共通点は見当たりません。犯人像も、命を狙われるような理由も、わかりません。一見別々にみえる殺人・殺人未遂事件の数々。
が、片山はそれらがどこか似ているような気がします。背後で操っている存在がある?だとしたら、それはいったい?
今回は、警察関係者で熱心に動いているのは片山ひとりのようなストーリー展開でした(もちろん、なぜか妹の晴美と猫のホームズもですが、彼女らは正式な警察関係者ではないので)。石津さえ登場場面登場場面は少なく、また晴美にゾッコンな描写描写もなくて、そのせいか(?)影が薄いような。石津といえば、猛烈に食べながら晴美にメロメロ・猫のホームズには緊張、というキャラが面白いのに。さしもの石津も晴美に振られ続けて熱がさめてきたのか(笑)なんせもう40年以上も片思いしつづけているんですから(笑x笑)。 警察署内での場面とか、他の刑事や警察官は出てきません。そういう意味では、刑事というより私立探偵が解くミステリーみたいになっています。でもその分、片山たちは自由に走り回っていて、軽くてテンポの速い展開、今回も一気読みでした。
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著者について
赤川次郎(あかがわ じろう)
『幽霊列車』で第15回オール読物推理小説新人賞、『悪妻にささげるレクイエム』で第7回角川小説賞を受賞。著作は610冊を超え、ミステリー小説を中心に、その捜索活動は多岐にわたる。2005年には、第9回日本ミステリー文学大賞を受賞。2016年、『東京零年』で吉川英治文学賞受賞。空前の大ヒット作にして、著者の代表作でもある「三毛猫ホームズ」シリーズは本作で54作目。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『三毛猫ホームズの懸賞金』
- 赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:株式会社講談社 カッパノベルズ
- 発行:2021年
- 初出:「小説宝石」2019年12月号~2021年3月号
- NDC:913.6(日本文学)長編推理小説
- ISBN:9784334077471
- 274ページ
- モノクロイラスト(カット)
- 登場ニャン物:ホームズ
- 登場動物:-